機械工学科の就職先 トヨタ?三菱重工?日本製鉄?

業界情報

機械工学科(機械系学科)の就職先を紹介します。

機械工学科の他にも、航空工学科、船舶工学科、原子力工学科、エネルギー工学科などを含んだ機械系学科としての就職先と考えていただければと思います。

機械系学科の就職先:御三家

機械系学科の就職先の御三家として、トヨタ自動車、日本製鉄、三菱重工業をとりあげます。これらの企業は、機械系エンジニアのはたらく典型的な3つのパターンに当てはまるからです。就職先もこれらのパターンに分けて紹介します。

下の図に、三つのタイプを紹介します。

トヨタ自動車タイプでは、機械系エンジニアは会社内で決めたキカイをつくります。多くの場合は、一般の方向けのキカイをつくります。もっともイメージしやすいと思います。B to Cの企業が多いです。

三菱重工タイプでは、機械系エンジニアは企業向けにキカイをつくります。日本製鉄タイプの会社に設備を納めます。これもイメージはしやすいと思います。B To Bでキカイを売る側の企業です。典型的には、

日本製鉄タイプでは、機械系エンジニアは企業が保有するキカイを管理します。また、どのようなキカイが必要かを、三菱重工タイプの企業に伝えて、キカイをつくってもらいます。

機械系の典型的な就職先の3分類:トヨタタイプ、三菱重工タイプ、日本製鉄タイプ

大卒の平均給料は公開されていることが少ないです。ただし、平均給料はトヨタが1,150万円、日本製鉄が1,050万円、三菱重工業が950万円というイメージで機械系の就活生は就活をしています。これが各タイプのほとんど上限と考えてよいと思います。

機械系学科の就職先:新御三家

また機械系学科の就職先の新御三家として、レーザーテック、ファナック、キーエンスをとりあげます。これらの企業は、「給料が高かったり」、「最先端の技術を活用したり」するという特徴があります。3つのパターンに当てはまります。就職先もこれらのパターンに分けて紹介します。

いずれの企業も「企業に対してキカイを売っていて」、「背景には半導体技術の進歩がある」という点が共通しています。

レーザーテック タイプは、半導体製造装置をつくっているメーカーです。半導体製造装置の技術は世界の最先端技術です。世界の半導体製造装置業界の中で、日本の半導体製造メーカーは高いシェアを有しています。半導体製造装置メーカーは、半導体の微細化に大きく貢献しています。半導体製造は自動化されている面が大きいです。このため、メカトロニクス的な視点も多くあります。

ファナックタイプは、ロボットなどメカトロニクス技術を生かした製品をつくっているメーカーです。産業用ロボットは、自動車組立工場をはじめとして工場の自動化に貢献しています。メカトロニクスは機械系、電気系、情報系の境界領域です。「情報処理技術の進歩の速さ」と「ハードウエア技術の進歩の遅さ」があいまって、機械系でも電気系や情報系によった領域(メカトロニクス領域)の発展が加速しています。

キーエンスタイプは、工場をもたない(ファブレス)のメーカーです。キーエンスは、センサーなどの工場の自動化製品(FA製品)などを製作しています。一般的にファブレスメーカーは、工場を持たないため、製造能力での差別化が難しくなると言われます。しかしながら、それを補える高い営業力(ブランド力)、高い製品企画力、高い設計能力を有するという点がキーエンスタイプの特徴です。

最近勢いのある就職先の3分類:機械系エンジニアの働けるもののみに限定

これらの大卒の平均給料は公開されています。平均給料はレーザーテックが1,400万円、ファナックが1,300万円、キーエンス2,100万円です。これらの企業は、日本国内で機械系エンジニアとして働く上で本当の意味での上限です。機械系エンジニアは、これ以上の給料は手にできません。

再掲するとはトヨタが1,150万円、日本製鉄が1,050万円、三菱重工業が950万円というイメージです。上記の6つの企業は、しっかりと働くという文化があります。しいて言えば、これらの企業の中ではトヨタの働き方は比較的ホワイトです。

御三家タイプの企業

御三家トヨタ、三菱重工、日本製鉄と似た事業を持つ企業を簡単にまとめます。

トヨタタイプの企業

何を作るかは会社の中で決定するタイプです。B to Cの企業や、汎用製品を企業に販売するタイプの企業が該当します。何を作るかは市場を調査して決定します。

最もイメージしやすいタイプの企業です。

先述している通り、どんなキカイをつくるのにも役割の負担は異なっていても、機械系、電気系、情報系のエンジニアが必要です。ここでは、機械系がメインとなるキカイについてまとめます。

作ってるキカイ作ってる会社
ガソリン自動車トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車
ドライヤーパナソニック
エアコンダイキン、三菱電機
建機コマツ、日立建機
農機クボタ
血液検査装置シスメックス

三菱重工タイプの企業

お客さんのために、キカイを製造する企業や組織です。

お客となる企業からお願いされたキカイを作ります。企業間の協力で成り立つため、どこからどこまでが、どの会社の技術かはなかなか決めづらい点があります。キカイのイメージしづらいと想定される部分には、YouTube動画を付けております。

日本製鉄タイプの企業がキカイを買うことになります。このため、三菱重工タイプの企業と日本製鉄タイプの企業は対応があります。

作ってるキカイ作ってる会社
防衛装備(潜水艦、護衛艦、戦闘機、ミサイル)防衛装備庁、三菱重工
作ってるキカイ作ってる会社
鉄鋼プラント(製鉄所)日本製鉄、JFEスチール、日鉄エンジニアリング、JFEエンジニアリング

鉄鋼プラントの一部である、転炉の工程の動画です。転炉は、成分を調整し鉄の特徴を決める工程です。

作ってるキカイ作ってる会社
鉄鋼プラント向け機械日鉄エンジニアリング、プライメタルズテクノロジーズ(三菱重工)

圧延を行う機械です。圧延は、鉄をロールで伸ばして製品の質を決める工程です。

作ってるキカイ作ってる会社
原子力プラントJAEA*1、三菱重工、東芝ESS*2、日立GEニュークリアエナジー

柏崎刈羽原子力発電所の原子炉です。原子炉で、核分裂反応をおこし熱を取り出します。

作ってるキカイ作ってる会社
火力発電プラント、火力発電プラント機器三菱重工、東芝ESS

三菱重工の発電用ガスタービンです。ガスタービンは、ガスを燃やすことで回る羽根車です。発電機とつなげると発電ができます。脱炭素で向かい風ですが、大型ガスタービン分野の世界三強(GE、シーメンス、三菱重工)の一角です。

作ってるキカイ作ってる会社
水力発電プラント、水力発電プラント機器日立三菱水力、東芝ESS

ダムで水車を回すことで、電気をおこします。

作ってるキカイ作ってる会社
鉄道車両日立製作所、川崎車両(川崎重工)
作ってるキカイ作ってる会社
水処理プラント(浄水場、下水場)日立製作所、JFEエンジニアリング
作ってるキカイ作ってる会社
環境プラント(ごみ処理場)日鉄エンジニアリング、JFEエンジニアリング、川崎重工|

日本製鉄タイプの企業

生産などに関連するキカイについて、「どんな機能があればよいか」や「どのようにメンテナンスしていけばよいか」を検討します。

家庭で言えば、どんなエアコンを買うか決める役割に近いと思います。エアコンの選定では、「何畳の部屋を冷やすか」が必要な情報です。このように「どのような情報を伝えたらよいか」を適格に把握できる必要があります。時には、メーカーにオーダーメイドをしてもらいます。大きな金額に関わるため、深い知識が必要となります。

キカイを買う人がいれば、製造する人もいます。例えば、日本製鉄が購入する鉄鋼プラントむけのキカイをプライメタルズテクノロジーズ(三菱重工)が生産していたりします。

使ってるキカイ、キカイを使っている会社、その会社の最終製品をまとめて以下に示します。

使ってるキカイ使ってる会社最終製品
製鉄プラント日本製鉄、JFEスチール鉄鋼
防衛装備防衛省、防衛装備庁防衛力
化学プラント旭化成化成品
原子力プラント東京電力、関西電力電力
火力プラントJERA、関西電力電力
鉄道車両JR*3運送
窯業(セラミクス)TOTOトイレ
半導体工場キオクシア、ルネサス半導体
水処理プラント(浄水場、下水場)地方公共団体上水、下水処理
環境プラント(ごみ処理場)地方公共団体ごみ処理
航空機JAL、ANA運送

新御三家タイプの企業

前述の新御三家レーザーテック、ファナック、キーエンスと似た事業を持つ企業を簡単にまとめます。給与については、新御三家ほどではありません。

レーザーテック タイプ

半導体製造装置を製作するタイプです。日本企業が、世界的にも高い技術力及び実績を有する分野です。給料が高い企業が多いです。また、機械系学科のカリキュラムを修了していれば、採用の対象となります。

レーザーテックや東京エレクトロンには労働組合がありません。半導体は事業の波(半導体サイクル)がかなり大きいです。東京エレクトロンは世界4大半導体製造装置メーカーですが、2000年代にはリストラも行っています。

一方、2019年ごろからは、半導体の景気の波は少なくなっているという半導体スーパーサイクル理論もささやかれています。

作ってるキカイ作ってる会社
半導体製造装置レーザーテック
東京エレクトロン
スクリーン
アドバンテスト
ディスコ

下の動画は、台湾積体電路製造(TSMC)の工場です。半導体の工場は自動化されています。半導体工場専用の装置が、半導体製造装置です。動画の中に出てくる銀色のキカイです。

東アジアには台湾のTSMC、韓国のサムスン、日本のキオクシア、エルピーダなど多くのトップ半導体メーカーがあります。これらの、工場に装置を納めることとなります。

ファナック タイプ

ファナックは産業用ロボットメーカーです。産業用ロボットメーカーとしては、川崎重工、安川電機などがあります。

ロボットは、機械系、電気系、情報系の合わせ技で作られます。いわゆるメカトロニクスの領域に位置する製品です。ファナックは制御装置(情報系)、川崎重工は航空機など(機械系)、安川電機はモーター(電気系)を各々発展させて、同じように産業用ロボットという製品に到達しています。ロボットがメカトロニクス領域に属することがよくわかると思います。

ファナックと安川電機は、各々世界の4大ロボットメーカーの一角を占めます。

川崎重工は、医療機器メーカーのシスメックスと一緒に医療ロボットの開発も行っています*4。

作ってるキカイ作ってる会社
ロボットファナック
川崎重工
安川電機

この動画は、ホンダの溶接工程です。溶接している黄色いロボットを作るのがファナック、安川電機、川崎重工などです*5。

下の動画は、Medicaroid(川崎重工とシスメックスの合弁会社)の手術ロボットです。

キーエンス タイプ

キーエンスは、ファブレス企業です。製造部門との連携が薄いため、非常に高い設計能力が必要です。キーエンスタイプと括りましたが、機械系のエンジニアが働くメーカーでファブレスというのは、あまりないと思います。

ファブレスであることとは関係ありませんが、キーエンスは工場の自動化用装置(FA装置)をつくっています。以下では、FA装置を作っているメーカーをまとめています。FA装置という業界は、少し機械系の知識から遠いです。

作ってるキカイ作ってる会社
工場自動化用装置キーエンス
三菱電機
安川電機

以下の動画は、三菱電機の工場用の制御装置の組立の様子です。工場の自動化の様子がイメージしやすいと思います。

工場自動化用の装置の進歩は、最近の半導体の進歩によるところが多くあります。工場の自動化には、「各機器を操作するための制御装置」や、「状態を把握するためのセンサー」、「自動で動かすためのモーター」などが必要です。半導体の進歩は、制御装置やセンサーの高度化や低価格化が進展しています。このため、より多くの工場に自動化が普及するようになっています。人口減少ということもあいまって、現在FA装置業界が盛り上がっています。

機械要素が0な部門

世の中のキカイちっくなものの中には、機械系の学問があまり必要のない分野もあります。このような分野は機械系を卒業しても、就職するのは難しいです。

特に現在は情報系の技術の発展が著しいです。このため、情報系が中核となる製品を以下に紹介します。これらに興味がある場合は、機械系ではなく情報系に進学することがオススメです。

情報の処理は、コンピュータで行われます。コンピュータの中で活躍しているのは、半導体です。現在の情報系の進歩の根幹には、半導体の進化が存在します。

半導体メーカーは半導体サイクルなどによって、比較的雇用が不安定です。しかしながら、情報系の仕事は、半導体サイクルの影響を受けません。また勤務地が大都市圏に集中しているという特徴もあります。

■ 情報システム開発
企業や官公庁などの、情報システムをつくります。情報システムは、コンピュータで処理します。

SIerとして括られる企業(NTTデータ、日立製作所、日鉄ソリューション、アクセンチュア、富士通、NECなど)がシステムを作ります。

■通信事業者
携帯電話などの通信事業者です。NTTドコモなどが該当します。

通信インフラを握り、規制と過去の資本で高い利益率をあげています。このため、労働量が少ないという特徴があります。

■ゲーム、アプリ開発
サイゲームス、任天堂などです。一般の人向けにゲームをつくります。

機械系のメーカーと比較すると限界利益率が高いです。このため、当たれば利益がかなり大きくなります。

お金を稼ぐなら

お金を稼ぐことを第一に考えるのであれば、学力に応じて下記のような進路をとると、期待値を最大化できると思います。

ただし、お金を稼ぐことだけが人生ではないので、参考までとしてください。

・地方国立、マーチレベル工学部レベル⇒工学部
地方国立~京大の間⇒文系理系どこの学部でも似た結果。ただし、他人に無意味に頭を下げたくない人の場合は工学部。
・東大理Ⅰ京大工学部レベル⇒医学科

一部の企業は大卒の平均年収を公開しています。

例えば以下のような本で、企業ごとの年収は確認できます。

機械系学科に関する前提知識

ここからは、機械系の就職先をイメージする上で知っておいたほうが良い事項をまとめて紹介していきます。

キカイの階層性(分業)

キカイには、階層性があります。

各個人や各企業には、得意なことや出来ないことがあります。社会の中では、企業レベルで役割を分担し、最終的にキカイをつくり上げます。

例えば、電車(鉄道車両)を1人の人間や1つの企業が、一からつくり上げることはできません。多くの企業が、素材や部品を分担してつくることで、最終的に電車がつくり上げられます。

また素材や部品によって機械系、電気系、情報系など、必要となる知識が異なります。これは、それぞれの製品で困難な点が異なるからです。 このため、分業した担当ごとに、どの知識に重きが置かれるかが分かれます。

電車(鉄道車両)を例として説明します。

鉄道車両は、日立製作所や川崎重工などの鉄道車両メーカーが設計・製作します*6車両の設計は機械系の仕事です。

しかし電車を動かすモーターや、モーターの制御装置、車輪などは、他の会社から購入しないといけません。

モーターは、電気系や機械系の範疇です。また、車輪(輪軸)は金属工学などの範疇です。

このように鉄道車両一つ取っても、多くの要素から構成されています。また、それらの要素は、別々の会社で作られています*7。

キカイ作ってる会社主な知識
鉄道車両日立製作所、川崎重工機械系
鉄道台車日立製作所、川崎重工、日本製鉄機械系
輪軸日本製鉄金属材料系
車両用エアコン三菱電機、東芝、日立製作所機械系
モーター日立製作所、三菱電機、東芝電気系、機械系
VVVFインバータ日立製作所、三菱電機、東芝電気系
パワー半導体素子日立製作所、三菱電機、東芝電気系
制御システム日立製作所、三菱電機、東芝情報系

以下の動画は、鉄道車両メーカー(日立製作所笠戸事業所)からの視点の動画です。車両メーカーなので、モーターやインバーターなどの部品を作成する工程は含まれていないことが分かります。

電車は多くの部品から構成される。各部品でキーとなる技術的なポイントは異なる。

製品開発のための工学と生産のための工学

社会で、機械系エンジニアの業務は大きく分けて2つあります。1つ目は、製品開発です。2つ目は、製品を生産するための設備の管理です。

自動車産業でいえば、自動車の開発が一つ目の業務にあたります。そして、自動車の生産設備の管理が2つ目の仕事になります。

製品を大量に作る場合、キカイによる自動化が不可欠です。工場の生産設備や自動化を管理することも機械系エンジニアの仕事です。例えばトヨタ自動車は、大量生産を行うことから、工場の生産設備の管理を行うエンジニアが重要視されます。

次の動画は、トヨタ自動車九州の組立工程です。このような、ラインを設計するエンジニアも必要です。

職業訓練としての機械工学科

機械系学科を卒業すると、機械系エンジニアになれます。逆に言うと、機械系学科のカリキュラムは職業訓練的な側面があるということです。

職業訓練というと面白くなさそうなイメージがあります。しかし、多くの場合これはあてはまりません。なぜならば、機械系学科の基礎は物理学などであり、入試の段階でなんとなく適性のある人が工学部を志しているためです。高校で物理を勉強したりすることに、かなり大きな抵抗感があるわけでは無ければ、機械系の学科はそこそこ楽しく卒業できると思います。

なお、大学3年までで機械工学のおおよその基礎を学習します。大学4年から修士2年までは、研究室という10~20人ほどの集団で研究を行います。研究で学べることは、学んだことをどのようにしたら、実践に生かせるかを考えるスキルです。

機械系学科では大学を卒業した後に、大学院の修士課程に2年行く人が多いです。しかし、研究は所属する集団によっては精神に悪い影響があります。大学院を中退して、大学卒として就職する人もいないわけではありません。また修士課程を修了して、技術者として日本の企業に就職すると大学学部卒+2年の待遇となります。学部を卒業して就職する場合より、2年分の学費と時間、給料を失います。しかしながら、エンジニアを生業とするのであれば、修士の学位がある方が便利です。

工学部と理学部の違い

工学部と理学部の違いは色々あります。ここでは就職に関する部分のみ抽出します。

工学部の入学者は、はじめからモノづくりが好きだったり、クルマが好きだったりするわけではありません。就職先などに興味もなく、物理や数学をしたいという方が多いと思います。

工学部に入ると、工場見学などがカリキュラムに組み込まれています。はじめは工場見学に対して興味もないですし、楽しいとは思わないと思います。しかしながら、時間がたち、慣れてくると、物理などをベースとして、ものづくりの難しい点などのイメージがつくようになります。このため、工場見学も面白いなと感じるようになります。こうして、いつの間にか多くの人が、ボーっとしているうちにエンジニアとして社会ではたらくことになっています。

おそらく人間には、長く触れたものに親近感を抱く本能があるのだと思います。工学部は、モノをつくってお金を稼ぐ学問です。このため工学部に所属していると、いつの間にかエンジニアとして働いて、お金を稼ごうというメンタリティが身に付きます。この点が理学部とは大きく異なる点だと思います。

また大学卒業後も同じような業界で働く人が多いです。このため、卒業後も業務に関する事項などを通して、友人とのつながりが維持されることが多いと思います。

技術の進歩

機械工学に関する、技術の進歩を大雑把にまとめます。日本で機械工学の技術が、欧米にキャッチアッブした1980年代以降を対象とします。機械工学の基本的な手法という点では、進歩がほとんど終わっています*8。

素材の進歩や半導体技術の進歩が、機械工学の進歩を支えています。

■ 材料:高張力鋼板、炭素繊維など
材料の進歩は、ゆっくりですが確実に行われています。
・高張力鋼板は自動車のボディに使われ、軽量化に貢献しています。
・炭素繊維は飛行機に使われ、軽量化に貢献しています。

■ 設計技術:コンピュータ支援設計など
CAEなどで、簡単に高度なシミュレーションが行えるようになっています。シミュレーションでは、実験を模擬することができます。CAEの進歩は、コンピュータの進歩と一体です。コンピュータの進歩は、半導体技術の進歩によるものです。

■ 制御技術:キカイの制御
キカイによって制御が高度化されるようになりました。制御はコンピュータによって行われます。半導体技術の進歩で、コンピュータの情報処理能力が向上しました。

就職先を紹介する理由

機械系学科を卒業するとどのような企業に就職するか、一般の方はなかなかイメージがつかないと思います。

大学に入学し、学年が上がってから就職先に不安を覚え、他の学部や他の学科に行けばよかったかと思う人もいます。そのようなことが減るように、事前に確認ができるようにと考え情報をまとめています。

結果的に、私の知り合いの場合は、就職後も機械系学科で学んだことを生かして、楽しく生活している人が多いです。

本ページでまとめている就職先の範囲

ここで紹介する就職先は、機械系学科で学んだからこそ就職先です。

教育学部に行った人の全員が教師になるわけではありません。これと同じように、工学部出身者でもエンジニア以外の方も多くいます*9。

このため、ここで紹介する就職先には、教員、コンサルティング、銀行、商社などは省かれています。しかしながら、 機械工学科出身者がこれらの就職先に就職できないことを意味しません*10。 ただし、もちろん医師や薬剤師の資格は取れません。

どの学科であれ、大学時代の過ごし方によっては、就職できる選択肢は大きく変わってきます。しかしながら、ここで紹介するような就職先は、機械系学科で学ばなければたどり着くことが難しいものです。逆に、機械系学科で学んでいれば、比較的簡単にたどり着くことができます*11。

工学の意味

工学の世の中における位置づけについて、京都大学工学部の理念には以下のようなきさいがあります。

理念と目標 — 京都大学 工学部・大学院工学研究科

学問の本質は真理の探求である。

その中にあって、工学は人類の生活に直接・間接に関与する学術分野を担うものであり、分野の性格上、地球社会の永続的な発展と文化の創造に対して大きな責任を負っている。

工学を含め、科学は再現性を高める営みです。人間が望むものを製作する際に、再現性に難点があれば、それがそのまま工学の対象になるイメージです。結果的に製作したモノをとおして、社会の構築に貢献する学問というようなイメージだと思います。

工学部の各学科の立ち位置

偏見で工学部の各学科の社会における立ち位置を以下にまとめています。京都大学や東京工業大学の学科構成をもとにまとめているので、遠からず近からずという感じだと思います。

機械系や電気系、情報系は、イメージしやすい工学部です。再現性が高い状態で、広い意味でのキカイをつくる際に必要な知識が学べます。ここでのキカイとは、一般の人がイメージする機械のことです。

工学部の機械系学科という際の機械は、通常のキカイよりも狭い範囲を指します。一方、1世紀前(1900年時点)のキカイに関する事項は、機械系学科によって網羅されています。最近のキカイは高度なため、一つの学科ではカバーしきれません。

キカイとして、身近な電車を例として考えてみると、「電車の車両は機械系の範疇」、「電車で電気をを変換するインバータは電気系の範疇」、「車両間の通信は情報系の範疇」です。

電車の場合は、機械系は主役的な存在です。しかし例えば、スマートフォンのようなキカイの場合は、機械系は脇役的な存在です。例えば、スマートフォンでは、機械系の範疇は放熱設計などの脇役的なもののみなのではと思います。

■機械系/電気系/情報系:キカイをつくる。雰囲気もやってることも、イメージしやすい工学部。
■化学系/金属材料系(冶金):素材をつくる。素材科学は法則が少なく手法は総当たり的。
■土木系/建築系:町や建物をつくる。芸術性や政治性が強い。
■生物工学系(バイオ系):生物学的な知見を利用する。アメリカでは熱い分野。しかし現状の日本では構造上、医師や製薬メーカーに利益をとられる。儲からない*12。

工学部内の学科・分野の分類イメージ

東京大学、京都大学、東京工業大学を入試区分レベルで、具体的に分類すると以下の表のようなイメージとなります。

分類東京大学京都大学東京工業大学
■キカイをつくる
・機械系
・電気系
・情報系
理科一類
理科二類
物理工学科
電気電子工学科
情報学科
工学院
情報理工学院
■素材をつくる
・化学系
・金属材料系(冶金)
理科一類
理科二類
工業化学科
物理工学科
物質理工学院
■町や建物をつくる
・土木系
・建築系
理科一類
理科二類
地球工学科
建築学科
環境・社会理工学院
■生物学的な知見を利用する
・生物工学系(バイオ系)
理科一類
理科二類
-生命理工学院

仕事は学科ごとに区分けされる

一人の人間が学べる量には、限りがあります。このため、工学部は学べる内容によって、複数の学科に分かれています。

また、企業内では工学部の学科と対応するように仕事内容が整理されています。

業務は再現性高く回せることが重要です。多くの場合、学部教育程度のレベルで業務内容は機械系学科や電気系学科、情報系学科などに分割され整理されています。これによって、理想的には機械系として割り振られた業務は、機械系学科を卒業した従業員であれば、機械工学の知識を生かして理解し、実行できるようになっています。

学校の教員が、理科の教員や数学の教員など、免許によって分かれていることと似ています。ただ、工学部やエンジニアには免許がない点は異なります。

他の例としては、工学部の学科とは、野球やサッカー、バスケのポジションに近いと思います。工学部のある学科を出ていることは、何か一つできることを表す証となります。

学科間の共通点

ここまで、工学部内の学科間の違いを述べました。

しかし、機械系、電気系、情報系にも多くの共通点があります。機械系と電気系の間には、物理学があります。また機械系、電気系、情報系ともに基礎的な数学という共通点があります。

このように、重なる領域があるため、その知識を通して工学的な意思の疎通が可能となります。どんな楽器をやっていても、楽譜は読めるというのに近いかもしれません。機械系でも、電気系でも、情報系でも、基礎的な物理や数学は理解できます。ただし、より具体的な工学の中身は分野外からはイメージしづらいです。

機械系、電気系、情報系の関係のイメージの一部抜粋

機械系学科に該当する学科の具体例

いくつかの大学について機械系学科に該当する学科を具体的に紹介していきます。

量子○○学科という学科は、原子力工学科由来の学科です。また、東京大学のシステム創成学科は、原子力工学科及び船舶工学科由来の学科です。

航空工学科は日本に多くあります。しかしながら、日本の航空機産業は比較的小さいです。このため、航空工学科を卒業しても航空機産業に関われるとは限りません。

物理工学科は、東京大学、京都大学、名古屋大学にあります。括り方に違いがあるので注意が必要です。統計物理学は、就職時に直接的な使い道があまりないと思います*13

機械系に進みたい場合は、京都大学の物理工学科のみが該当します*14。

■東京大学
・工学部(理科一類) 機械工学科、機械情報工学科、航空宇宙工学科、精密工学科、(システム創成学科)
学科紹介 | UTokyo-Eng

■京都大学
・工学部 物理工学科:機械システム学コース、宇宙基礎工学コース、原子核工学コース、エネルギー応用工学コース
京都大学工学部 物理工学科

■東京工業大学
・工学院 機械系、(工学院 システム制御系)
工学院 | 学院 | 組織一覧 | 東工大について | 東京工業大学

■大阪大学
・工学部 応用理工学科:機械工学コース、生産科学コース
学科目・コース|大阪大学工学部応用理工学科

・工学部 環境・エネルギー工学科:エネルギー量子工学コース
研究内容 | 大阪大学工学部 環境・エネルギー工学科/大阪大学大学院工学研究科 環境エネルギー工学専攻

・基礎工学部 機械科学コース、知能システム学コース
学科とコース | 大阪大学 基礎工学部 高校生・受験生向けサイト

■名古屋大学
・工学部 機械・航空工学科:機械システム工学コース、電子機械工学コース、航空宇宙工学コース
機械・航空工学科 | 工学部 | 名古屋大学

■東北大学
・工学部 機械知能・航空工学科
機械知能・航空工学科|東北大学工学部

■九州大学
工学部(Ⅲ群)機械工学科、航空宇宙工学科、量子物理工学科
学科(群)一覧 | 九州大学工学部 大学院工学府 大学院工学研究院

工学部(Ⅳ群)船舶海洋工学科
九州大学 海洋システム工学部門

■北海道大学
工学部 機械知能工学科
北海道大学工学部 機械知能工学科 大学院工学院

■神戸大学
工学部 機械工学科、(情報知能工学科)
機械工学科 | 神戸大学大学院工学研究科・神戸大学工学部

■慶応大学
理工学部 機械工学科、(システムデザイン工学科)、(物理情報工学科)
機械工学科 | 慶應義塾大学理工学部

■早稲田大学
基幹理工学部 機械科学・航空宇宙学科
創造理工学部 総合機械工学科
学部・大学院・関連組織 – 早稲田大学 理工学術院

本ページで具体的に名前を挙げた企業は、旧帝大、東工大、神戸大、早慶などで学べば、十分に就職可能なものがほとんどです。

また関係する製品を製造する企業であれば、ほとんどの大学で就職可能です。

まとめ

機械系学科の就職についてまとめました。

いわゆるキカイを作る上では、機械系、電気系、情報系の知識が必要です。

機械系学科は古くからあり、手法が確立していることもあり、就職に苦労することは少ないです。

このため、逆説的に高校物理が好きで大学でも勉強したいと思っている高校生は、機械系学科に進むと良いと思います。これは、就職先を得られるかを心配しなくても、勉強・学問・研究に集中しやすいからです*15。

機械系の技術の進歩は、半導体の進歩や材料の進歩によるところが大きいです。

特に半導体技術の進歩が著しいです。このため、コンピュータを活用した情報系が今では非常に技術的にも給与的にもHOTな領域になっています。

*1:原子力研究開発機構

*2:東芝エネルギーシステムズ

*3:私鉄は機械エンジニアの立場が低く、鉄道車両の調達、使用決定力は低い。JRでは、車両はJRで開発しているという形となっている。

*4:合弁のmedicaroidでhinotoriを開発

*5:ロボットの標準色は、ファナックが黄色、安川電機が青色です。

*6:JR各社の場合、JRが車両の設計という形になっています。しかし、このような形は珍しく、多くの場合車両メーカーが設計を行います。

*7:なお、以下で川崎重工は川崎車両、東芝は東芝インフラシステムズをあらわすものとして表記しています。

*8:機械工学という分野が確立されているからこそ、就職がいいとも言えると思います。

*9:技術者のことをエンジニアといいます。技術者よりも発音がしやすいです。最近はIT系エンジニアのみをさして、エンジニアと呼ばれることもあります。

*10:特に難関大学と呼ばれる大学では、コンサルティングなどに行く方が一定数います。

*11:道に迷ったときに交番に道を聞けるコミュ力があれば、技術面接1~2回によって採用が決まります。

*12:生物工学であってもバイオに携わるのであれば、日本国内では医学科を目指すべきです。研究上の制約、金銭面を考えると、国内では医学科が最も有力な選択肢です。具体的に説明します。まず、金銭面です。生物工学科の卒業生は就職先がかなり限られます。生物に関わりお金が稼げる仕事は、人間の人体に関わるものです。しかしながら、人間の人体に関わる仕事は、国の法制度上、業務独占資格を有する医師、薬剤師、看護師が行わなければいけません。このため、生物工学は卒業後に稼げる分野が狭いのです。生物工学の学問を身につけても、自分の手元にはお金が残りません。次に研究面です。研究では、研究予算が必要です。バイオ系(生物医療系)には多くの科研費が分配されます。しかしながら、これらも人体に関する事項がゴールとなる研究がメインです。研究で人体が関わると、医師免許が必要です。このため生物工学の大学院生が命を削って行った研究は、医師免許を持つ研究者に帰するものとなります。このように、研究面でも生物工学の分野は、医学科の下部のような存在なのです。なお、前述のように卒業後の面倒を医療界が見てくれるわけではありません。以上の理由から、生業としてバイオをしたいのであれば、医学科に行くことをおすすめします。医学科が無理な場合でも、最低限お金を稼ぐことを考えるのであれば、機械系や電気系、情報系に進み、就職のタイミングで医療機器メーカに進むのがよいです。ただし、この場合は生物系の学問に触れる機会は少なくなります。

*13:日本は統計物理学の理論研究で世界の最先端を走っています。アカデミアに残りたい場合は有力な選択肢だと思います。

*14:東京大学の物理工学科は、統計物理学の括りようです。 京都大学の物理工学科は、機械系+金属工学の括りのようです。名古屋大学の物理工学科は、金属工学+統計物理学の括りのようです。

*15:本当に物理学でアカデミアに残りたい場合は、理学部物理学科に進学してください。

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