誘導電動機のトルクカーブの見方【FA/機械システム/プラント】

モータ・アクチュエータ

誘導電動機(誘導モータ、Induction motor、IM)のトルクカーブ(回転速度-トルク特性、トルク速度特性曲線)の見方を紹介します。

モータのトルクカーブとは?

トルクカーブとは、モータの発揮できるトルクと回転速度の関係を平面上にまとめた特性図です。

モータのトルクカーブは縦軸がトルク(N・m)で横軸が回転速度(rpm)であることは共通です。

この記事では、商用電源駆動またはV/f制御の場合の誘導モータのトルクカーブの見方をまとめています。ベクトル制御の場合のトルクカーブの見方は、以下の記事を参照願います。

誘導モータのトルクカーブの特徴

誘導モータ(商用電源駆動またはV/f制御)のトルクカーブの特長は以下の二点です。

トルクカーブ上のみ運転可能である。
・トルクカーブで囲まれた範囲内で、自由にモータトルクを発揮できるわけではない

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誘導モータの各駆動方式ごとに可能な制御

誘導モータ(商用電駆動・V/f制御)型トルクカーブ

誘導モータは、汎用モータとして利用されているモータです。原理は以下のYouTube動画がイメージしやすいです。

商用電源駆動とインバータ駆動V/f制御の場合で、トルクカーブの考え方はほとんど同一となります。

誘導モータ(商用電源駆動・V/f制御)型トルクカーブの見方①

まず商用電源駆動の場合について紹介します。

誘導モータの商用電源駆動は、一定の回転速度でのみ運転できます。細かな制御は行えません

一方、誘導モータのV/f制御では、大まかに回転速度を制御することができます

以下に、誘導モータ(商用電源駆動)のトルクカーブを示します。誘導モータは、オレンジ色の線(トルクカーブ)上のみで運転することができます

図中では、負荷機械のトルクカーブも青色で示しています。

モータトルクとポンプトルクの交差する赤い点のみが定常時に運転可能な点となります。速度を制御することはできません。

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誘導電動機(商用電源駆動)のトルクカーブ(回転速度ートルク特性)の見方

誘導モータ(商用電源駆動・V/f制御)型トルクカーブの見方②

誘導モータ(V/f制御)の場合のトルクカーブの見方は、基本的に誘導モータ(商用電源駆動)の場合と同様です。

V/f制御では、同期回転数を変化させることでトルクカーブを変化させます。これによって、負荷機械のトルクカーブとの交点(定常運転点)が変化します。

このように定常運転点が変化することで、V/f制御ではモータの回転速度を制御します。

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誘導電動機(V/f制御)のトルクカーブ(回転速度ートルク特性)の見方

誘導モータ(商用電源駆動)の始動方法

商用電源駆動の誘導モータの最大の特長は、特別な始動装置がなくても自動で始動が行える点です。

以下の図に、誘導モータの始動時のトルク変化の例を示します。

+記号で、運転点の変化を示しています。

電動機トルクが負荷トルクより大きな範囲では、誘導モータと負荷機械*1は加速します。そして、最終的に電動機トルクと負荷トルクが等しくなる点(赤丸の点)が定常時の運転点となります。

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誘導モータと風水力機械のトルクカーブの例。始動時には、トルクカーブ上の+記号を通過しながら定常運転点に至る。

誘導モータ(商用電源駆動)の始動時の注意点

誘導モータの始動時には、大きな電流が流れます。流れる電流は定常時の電流の4~10倍程度です。

大きな電流が流れると、電源容量が小さい場合、電源の電圧が降下します。

電源電圧が低下すると、他の機器が停止したりする恐れがあります。

このため、誘導モータの商用電源駆動時は始動時に始動電流を抑える必要があります。

始動電流を抑える方法としては、「スターデルタ始動」「リアクトル始動」「コンドルファ始動」があります。また、そもそも「インバータ駆動V/f制御」を採用するなどの方法もあります。

以下に三菱FAの低電圧始動に関するページを示します。

また詳しい低電圧始動に関する事項については、日本電気技術者協会が公開するページを参照願います。

市販モータの分類の具体例

具体例として三菱FA製品で、誘導モータ(商用電源駆動・V/f制御)型に分類されるモノを以下にまとめます。他の企業の製品も同様です。

サイトを探したのですが、商用電源駆動の場合のトルクカーブの記載が、見つけられませんでした。電機機器学の教科書や電験などの資格では、かなり有名な特性図なので不思議です。

汎用誘導モータ(商用電源駆動)

商用電源駆動ができる汎用の誘導モータのサイトです。

トルクカーブの記載は見つけられませんでした。

汎用誘導モータ(V/f制御)

汎用誘導モータのV/f制御は、インバータによって行うことができます。代表として三菱FAのインバータのサイトを添付します。

インバータ駆動V/f制御では、制御によってトルクカーブが変わります。このため、以下のページと同様にトルクカーブが示されていることが少ないです。

以下のページのようにインバータ駆動V/f制御の場合でも、運転できる限界を示す場合があります。その場合はサーボモータ型のトルクカーブと似た見方となります。

しかし注意が必要な点があります。ベクトル制御と異なり、V/f制御ではトルクカーブの範囲内であれば自由に瞬時のトルク制御が行えるわけではありません。保護機能がない場合は、負荷機械のトルクに合わせてV/f制御で過大なモータトルクを発生させ過負荷となります。

V/f制御に分類される三菱FAの制御方式

V/f一定制御は、数%以内という大雑把な回転速度制御ができ便利です。しかし、以下の3つの弱点があります。

弱点①:問題周波数f、電圧Vを小さくするほど、電動機の発生できる最大トルクが小さくなる*2
弱点②:すべりが生じるため、電動機回転速度が数%ずれる*3
弱点③:電動機の運転温度によって、各周波数fごとに電動機の発生するトルクが変化する*4

三菱FAでV/f制御がベースとなっている制御方式は以下の通り複数あります。

先述のV/f制御の弱点と合わせて、三菱INVニュースより読み取れた特長についても記載しております。

表.三菱インバータ制御方式(V/f制御ベース)毎の特徴

制御方式V/f制御汎用磁束ベクトル制御アドバンスト磁束ベクトル制御最適励磁制御
基本的なイメージV/f制御V/f制御V/f制御V/f制御
弱点①への対応なし(トルクブースト要)ありありなし
弱点②への対応なしなしありなし
弱点③への対応なしなしありなし
軽負荷時の最大効率運転なしなしなしあり|

誘導モータの駆動・制御方式の分類

誘導モータには複数の駆動・制御方式が存在します。

下の図に、誘導モータの駆動・制御方式を示します。

一定の回転速度で良い場合は、誘導モータ(商用電源駆動)の採用で対応可能です。

定常時の回転速度のみを変化させたい場合は、誘導モータ(V/f制御)の採用で対応可能です*6

過渡的なトルクの制御や、回転速度や回転角度の制御を行う場合はインバータ駆動ベクトル制御が必要です。

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誘導モータの各駆動方式ごとに可能な制御

トルクカーブの分類

モータのトルクカーブは、モータの分類によって見方が異なります。

モータのトルクカーブは、以下の図のように大きく3つに分けられます*7

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モータトルクカーブの見方の分類(FA/機械システムの観点から)

サーボモータ型は、サーボモータの場合のトルクカーブの見方です。サーボモータとは、直流モータ(電圧・界磁電流制御)や同期モータ(ベクトル制御)、誘導モータ(ベクトル制御)のことです。

ステッピングモータ型は、ステッピングモータの場合のトルクカーブの見方です。

誘導モータ(商用電源駆動・V/f制御)型は、誘導モータ(商用電源駆動)や誘導モータ(V/f制御)の場合のトルクカーブの見方です。

まとめ

この記事では、誘導モータ(商用電源駆動・V/f制御)のトルクカーブの見方を紹介しました。

誘導モータ(商用電源駆動)は、トルクカーブ上のみで運転することができます。トルクカーブ上以外での運転は不可能です。

また、インバータ駆動V/f制御の場合は、電源を制御することでトルクカーブを変化させます。これによって、モータトルクカーブと負荷トルクカーブの交点を変化させ、回転速度を変化させます。

一定の回転速度で良い場合は、誘導モータ(商用電源駆動)の採用で対応可能です。

定常時の回転速度のみを変化させたい場合は、誘導モータ(V/f制御)の採用で対応可能です*8

商用電源駆動の誘導モータの最大の特長は、特別な始動装置がなくても自動で始動が行える点です。しかし、始動時には、大きな電流が流れます。流れる電流は定常時の電流の4~10倍程度です。この点には注意が必要です。

関連記事

各モータの違いについては以下の記事で紹介しているので、こちらで参照いただけたら幸いです。

また、誘導モータ(V/f制御)と誘導モータ(ベクトル制御)の違いなど、誘導モータの駆動方式や制御方式の違いは以下の記事で紹介しています。

各モータごとのトルクカーブ(回転速度-トルク特性)の見方については以下にまとめてます。

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