明快に分かるDCSの概念【PLCとの違い】【SCADAとの違い】

機械工学

このページではDCSについて紹介します。

DCSは工場を監視し制御するためのシステムです。

DCSなどを利用して工場の生産管理を行うことで、経営指標の改善を狙います。

DCSは古くからある言葉です。しかしながら時代とともに、DCSの表す範囲は移り変わっているようです。これはDCSを構成する表示装置や制御装置が、半導体の進歩により大きく進歩したからです。

半導体の進歩によって、汎用製品(SCADA、PLC、Windows PC)の性能が上がっています。これらの汎用製品が、DCSを構成する各要素を代替します。

上記を考えると、今後も汎用製品(SCADA、PLC、Windows PC)で工場の監視や制御を行う流れが続くと考えられます。

以下の図に、工場の監視制御に関わる製品や業種をまとめています。この図を見ると、DCS、SCADAやPLCの機能の違いを概観いただけると思います。

工場の監視・制御に関わる製品・業種

以下では、SCADAやPLCとの違いに触れながら、DCSについて更に紹介していきます。

DCSとはなにか?

DCSとは、工場で機械を監視して制御するためのシステムです*1

下の図に製造業におけるモノやデータの流れを示しています。

黄緑色で囲っている製造建屋で、工場の監視・制御が行われます。ここでDCSは用いられます。

製造業では、工場の監視・制御を実施することを含め、自動化・効率化が進められています。経営指標の改善を目的として、DCSなどを用いることで自動化・効率化が行われます。

工場の監視・制御とは何か?

DCSとエアコンのリモコン

DCSが工場の機械を監視し制御するといっても、中々イメージが湧かないものです。

身近な物で言えば、DCSはエアコンのリモコンのような役割を果たしています。エアコンのリモコンは、部屋の温度を見たり、温度を設定してエアコンを制御できます。同じように、DCSでは、工場の中の情報を見たり、工場の中の機械を制御できます。

表. エアコンのリモコンとDCSの比較

監視する対象 制御する対象
DCS 工場の状態 工場の機械
エアコンのリモコン 室内の温度 エアコンの本体

エアコンのリモコンが部屋の温度の監視とエアコンの制御を実施するように、DCSは工場の機械を監視したり制御したりします。

「DCS」と「エアコンのリモコン」の比較

なぜDCSは分かりづらいのか?

DCSについて調べると、何を表しているかよく分からなくなります。

それはDCSという言葉が指す概念が、人によって大きく異なるからです。これは時代によって、製品としてのDCSが指している概念が変わってきたことから生じていると思われます。

かつてのDCSの概念の方が指す範囲が広く、現在のDCSは指す範囲が狭くなっているようです*2

以下の図に、工場の監視・制御に関わる製品や業種をまとめた図を再掲します。この図で分かるように現在のDCSの指す範囲は、PLCとかなり近いものになっています。

工場の監視・制御に関わる製品・業種

伝統的なDCSと現在のDCSは違う

かつて、制御装置や表示装置などの性能がボトルネックとなった時代は、DCSメーカーが装置の導入(エンジニアリング)まで行っていたようです。

制御装置や表示装置でできることは、半導体とその使い方(エンジニアリング)によって決まります。かつては半導体の能力が低かったことや、価格の点から、工場の監視や制御のための仕組みを、装置とエンジニアリングの一体で開発する必要があったのだと思われます。

しかしながら、ここ数十年の半導体の進歩は凄まじいため、汎用的な制御装置(PLC)や、監視ソフトウエア(SCADA)、表示装置(Windows PC)の性能が非常に上がりました。また、これらの汎用装置を寄せ集めてエンジニアリングすることで、伝統的なDCSの機能を満足できるようになりました

つまり半導体が進歩したため、「装置開発」と「装置を使った設定(エンジニアリング)」を分離できるようになりました。

このような環境の中で、DCSの指す概念は縮小していきました。現在のDCSは、制御装置と表示装置のソフトウエアまでを指すことが多いようです。

・伝統的なDCS:監視と制御の全ての装置とエンジニアリング
・現在のDCS:監視ソフトウエアと制御装置のみ

DCSとPLCの違い

DCSとPLCを比較します*3

PLCは、Programable logic controller(プログラム可能な論理制御装置)の略称で、シーケンサーと呼ばれることもあります*4PLCは、制御内容をプログラムで書き換えられる制御装置です。同一の製品であっても、プログラムを変更することで多様な制御を実現できます。

下の表に示すようにDCSとPLCの共通点は、機械に指令を出す制御装置であるという点です。一方、DCSとPLCの違いは機能的には、DCSには表示装置があるがPLCには表示装置がないということです。

つまり、DCSと異なりPLCだけでは人間が直感的に工場の状況を監視できません

DCSとPLCの違い

表を見るとSCADAには、表示ソフトウエアの機能があることが分かります。また、PCにはディスプレイがあり、表示装置としての機能があります。

つまり、例えば「PC+SCADA+PLC」であれば、概念的にはDCSと同様の働きをします。

伝統的なDCSの場合は、各種設定を行うエンジニアリング工程まで、メーカーの業務に含まれます。このためPLCで言えばラダーを書くような工程も、DCSメーカー側で実施していたのものと推測されます。

一方、現在のDCSとPLCの違いは、主にDCSには表示ソフトウエアが含まれる点です

このHPをみると、計装PLCでは二重化が実施できる信頼性を高められることが強調されています。逆にいうと、DCSはPLCと比較して、二重化などの方法で高い信頼性を有しているのだと考えられます。" href="#f-ba77da9b" name="fn-ba77da9b">*5 。制御装置の性能を決める半導体技術は、日々進歩しいます。このため、現在のDCSとPLCに制御装置としての性能の違いは、以前よりも少なくなっているのではないかと思います。

DCSとSCADAの違い

DCSとSCADAを比較します*6

SCADA*7は、PCで工場の監視制御が行えるソフトウエアです。SCADAは、同一の製品であっても、表示内容の変更(エンジニアリング)を行うことで、多様な工場の監視が実現できるようになります。

下の表に示すようにDCSとSCADAの共通点は表示ソフトウエアであるという点です。またDCSとSCADAの違いは、DCSには制御装置があるが、SCADAは制御装置を含まないという点です。

つまり、DCSと異なりSCADAだけでは現場の装置は制御できません

DCSとSCADAの違い

表を見るとPLCには、制御装置の機能があることが分かります。また、PCにはディスプレイがあり表示装置となります。

つまり、例えば、「PC+SCADA+PLC」であれば、概念的にはDCSと同様の働きをします。

伝統的なDCSの場合は、各種設定を行うエンジニアリング工程まで、メーカーの業務に含まれます。このためSCADAで言えば表示画面を作成するような工程も、DCSメーカー側で実施していたのものと推測されます。

代表的な製品・企業

以下にFA事業として展開されているDCS、SCADA、PLCなどの代表的な製品・企業を紹介します*8

SCADAの連携することが多いERPやMESの代表的なサプライヤーも記載しています。

表. DCS、SCADA、PLCの代表的なサプライヤー

製品群 代表的なサプライヤー・製品
ERP SAPIFS
MES AVEVA
DCS 横河電機三菱電機
SCADA InTouchJoyWatcherSuiteGenesis64
PLC 三菱電機キーエンスオムロン

FA業界を俯瞰した情報については、下記のページに記載しています。
motor-actuator.com

FA業界を俯瞰する書籍

FA業界を俯瞰して理解するために役に立つ有名な書籍やサイトを以下の表に示します。

手軽に情報を把握したいときは、この表に記載の情報源を参照いただければと思います。

表. FA業界を俯瞰するために役に立つ有名な情報源

把握できる領域 情報源 情報源の名前
経営指標 書籍 中小企業診断士スピードテキスト2 財務・会計
生産管理指標 書籍 中小企業診断士スピードテキスト3 運営管理
ERP (企業資源管理システム) 書籍 世界一わかりやすいSAPの教科書 入門編*9
MES (製造実行システム) 書籍 エンジニアが学ぶ生産管理システムの「知識」と「技術」
生産設備 書籍 差別化戦略のための生産システム-プロセス技術と設備技術の融合
各FA機器(PLCを含む) HP 三菱FA e-learning はじめてのFA機器

まず、初めの2つは、FAによって達成する目標となりやすい「経営指標」と「生産管理指標」についてまとめられたテキストです。どちらも中小企業診断士取得のためのテキストです。

残りの4つは、上記の経営目標及び生産管理目標を実現するための手段を紹介したテキストです。よりお金の管理に近い領域から順に「ERP(企業資源管理システム)」「MES(製造実行システム)」「生産設備」「各FA機器(PLCを含む)」に分けて記載しています。

FA業界を俯瞰して理解するためには、「各FA機器」だけでなく「経営指標」「生産管理指標」「ERP(企業資源管理システム)」「MES(製造実行システム)」「生産設備」の理解が必要となります。

上記をまとめると以下のようなイメージとなります。以下のイメージでは、FAの関連する経営商標と技術部門の関係を示しています。様々な技術部門が、FA関連製品を利用して、経営指標の改善に取り組みます。この図からわかるように、ERP(SAPなど)、MESなどもFAと不可分な存在です。

経営指標と技術部門の関係

まとめ

このページでは、DCSについて説明しました。

DCSは監視制御システムです。DCSを用いることで、工場の状況を把握して、工場の機械を制御することができます

半導体の進歩により、装置の性能が上がりました。このためDCSは、汎用製品(PLC、SCADA、Windows PC)の組み合わせで実現できるようになっています。またDCSという言葉が表す範囲も狭くなり、PLCと近くなっています。

汎用製品は、廉価な傾向があります。このため、今後は汎用製品の組み合わせによって、さらに工場の監視制御が進むと考えられます。より多くの工場で、汎用的な製品による監視制御の普及が経営指標の改善に貢献すると思われます。

参考

DCSについて参考とした情報を以下に示します。
・日立評論
https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1986/06/1986_06_01.pdf

https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1991/10/1991_10_06.pdf

https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1992/04/1992_04_09.pdf

https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/2009/10/2009_10_00_pioneers.pdf

・横河電機HP
CENTUM VP | YOKOGAWA

motor-actuator.com

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*1:分散制御装置(Distributed Control System)の略称ですが、名称と実情との繋がりは薄いです。

*2:ネット上の情報を参照すると、古くからDCSが納めてある工場で働く人は、DCSの指す用語の意味を広くとらえがちなのではないかと思います。一方、設備メーカーで働く人は、DCSという言葉をPLCと近い意味で利用しているのではないかと思います。

*3:伝統的なDCSとPLCを比較します。

*4:シーケンサーは、国内最大手である三菱PLCの商品名です。

*5:PLC最大手メーカーである三菱MELSECにはDCSの制御装置部分にあたる計装PLCというものがあります。
https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/sols/sol/process/index.html
このHPをみると、計装PLCでは二重化が実施できる信頼性を高められることが強調されています。逆にいうと、DCSはPLCと比較して、二重化などの方法で高い信頼性を有しているのだと考えられます。

*6:伝統的なDCSとSCADAを比較します。

*7:Supervisory Control And Data Acquisitionの略称

*8:伝統的なDCSは、FA事業としては展開されていないので省略しています。FA事業として展開されていない場合、特注品としての扱いなのか情報が分かりにくく省いています。

*9:ERPを導入する際には、はじめに「SAP」の導入が検討されることが多いです。ERPは、「SAP」か「SAP以外」かと言われるほど、SAPが実質的に標準的な選択肢となっています。

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