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俯瞰して見るFA業界【製品ごとの代表的な企業は?】【ERP/MES/SCADAとの関係は?】

 FA業界とは、工場の生産設備を構成する汎用的な製品に関する業界です。

 FAは、”Factory Automation(工場自動化)”の略称です。工場自動化は、工場の生産や資材調達、営業情報を含めた生産計画などを省力化する取り組みです。FA業界と呼ぶ際には、特に工場の生産自動化に焦点を当てた製品・サービスを提供する業界を指すことが多いです 。

 

FA業界と製造業DXの関係

 FA(工場自動化)によるコストの低減商品付加価値の向上を通じて、企業としては経営指標の改善が図れる可能性があります。また現代社会は、物質的な豊かさに依存しています。FA(工場自動化)によって製品を低いコストで供給することは、現代社会全体を支える原動力となります。

 このようにFA業界は、企業の経営や現代社会の成立に欠かせない業界です。

 以下では、FA業界について概観します。

FA業界について俯瞰するための情報源

 まずFA業界を紹介する前に、FA業界を俯瞰して理解するために役に立つ有名な書籍やサイトを以下の表に示します。

 手軽に情報を把握したいときは、この表に記載の情報源を参照することがオススメです。

表. FA業界を俯瞰するために役に立つ有名な情報源

把握できる領域 情報源 情報源の名前
経営指標 書籍 中小企業診断士スピードテキスト2 財務・会計
生産管理指標 書籍 中小企業診断士スピードテキスト3 運営管理
ERP (企業資源管理システム) 書籍 世界一わかりやすいSAPの教科書 入門編*1
MES (製造実行システム) 書籍 エンジニアが学ぶ生産管理システムの「知識」と「技術」
生産設備 書籍 差別化戦略のための生産システム-プロセス技術と設備技術の融合
各FA機器(PLCを含む) HP 三菱FA e-learning はじめてのFA機器

 まず、初めの2つは、FAによって達成する目標となりやすい「経営指標」と「生産管理指標」についてまとめられたテキストです。どちらも中小企業診断士取得のためのテキストです。

 残りの4つは、上記の経営目標及び生産管理目標を実現するための手段を紹介したテキストです。よりお金の管理に近い領域から順に「ERP(企業資源管理システム)」「MES(製造実行システム)」「生産設備」「各FA機器(PLCを含む)」に分けて記載しています。

 FA業界を俯瞰して理解するためには、「各FA機器」だけでなく「経営指標」「生産管理指標」「ERP(企業資源管理システム)」「MES(製造実行システム)」「生産設備」の理解が必要となります。

 上記をまとめると以下のようなイメージとなります。以下のイメージでは、FAの関連する経営商標と技術部門の関係を示しています。様々な技術部門が、FA関連製品を利用して、経営指標の改善に取り組みます。この図からわかるように、ERP(SAPなど)、MESなどもFAと不可分な存在です。

経営指標と技術部門の関係

FA業界とは何か?

 FA(Factory Automation)は、工場の生産工程の自動化のことです。工場の自動化に用いられる製品のうち「より汎用的な機器」をFA機器と呼ばれます。このようなFA機器を製作・販売する業界は、FA業界と呼ばれます。

 FA機器は、汎用的なことが多いです。このため、例えば鉄鋼プラント専用のように、顧客専用設計の製品群はFA製品とは呼ばれることは多くありません。

 またソフトウエアにも、特定の業種のみで用いられるソフトウエアが存在します。MES(製造実行システム)やSCADA(監視制御・データ取得システム)は、FA業界に含められることが多いです。

 一方、ERP(企業資源管理システム)やCRM(顧客関係管理システム)などは、製造業のデジタル化という文脈では重要です。しかしながら、製造業以外の業種でも用いられるため、FA業界には含まれません

 以下の図に、FAに関する構図をまとめています。FA機器は、「汎用PLC」「汎用インバータ」「汎用センサ」などのことを指す用語です。

FAに関連する構図

FA業界と製造業DXの関係

 FA業界と製造業DXの関係を以下の図に示します。製造業DXとは、製造業でデジタル技術を利用して、業務や組織を変革して行くことです。

 

FA業界と製造業DXの関係

 上記の図で分かるように、製造業では各種の自動化・効率化が進められています。製造業の自動化・効率化は、「①ソフトウェアによる業務の自動化・効率化」と「②機械による製品生産の自動化・効率化」に分けられます

 IT業界(SIer、コンサルタント会社)は、情報システム導入や業務整理を実施する業界です。このため、IT業界は「①ソフトウェアによる業務の自動化・効率化」によって製造業の自動化・効率化に貢献しています。

 FA業界は、機械の製作に利用するFA機器を生産・販売する業界です。このため、FA業界は「②機械による製品生産の自動化・効率化」によって製造業の自動化・効率化に貢献しています。

 このような自動化・効率化の取り組みは、多くの企業で進められています。このため、IT業界及びFA業界ともに、高い業績を上げることができる環境となっています。

FA技術者の3つの立場

 自動化・効率化のための一連の取り組みは、以下の3つの立場の技術者によって実行されます。FA機器メーカを含む製品のサプライヤーは、以下の①の立場です。実際に、自動化・効率化を実施するためには、「②生産技術者、ITコンサルタント」や「③機械受託製造者、SIer」の協力が不可欠です。

①製品を開発するサプライヤーの立場(FA機器メーカ、ソフトウエア開発企業)
②上記製品を生産工程や業務への適用を計画する立場(生産技術者、ITコンサルタント)
③適用を実施する立場(機械受託製造者、SIer)

FA業界製品ごとの主要企業

 FAに関連する製品の主要なサプライヤーを紹介します。また、上述の②③を担う立場も業界レベルで併記しています。

表. FAに関連する製品の主要なサプライヤー

製品群 ①代表的なサプライヤー・製品 ②計画者 ③実施者
ERP SAP コンサルタント SIer
CRM Salesforce コンサルタント SIer
MES AVEVA コンサルタント、生産管理部門 SIer
SCADA InTouchJoyWatcherSuiteGenesis64 コンサルタント、製造部門 SIer
PLC 三菱電機キーエンスオムロン 生産技術部門 制御盤メーカー
機械設備*2 ファナック安川電機川崎重工 生産技術部門 機械受託製造者
サーボモータ 安川電機三菱電機パナソニック 生産技術部門 機械受託製造者
汎用インバータ 安川電機三菱電機富士電機 生産技術部門 機械受託製造者
センサ キーエンスパナソニックオムロン 生産技術部門 機械受託製造者

まとめ

 FA業界に関して紹介をしました。FA業界は、機械による製品生産の自動化・効率化」によって製造業の自動化・効率化に貢献する業界です。

 FA(工場自動化)によって製品を低いコストで供給することは、現代社会全体を支える原動力となります。このように、FA機器はこれからの社会でより重要となると考えられます。

 また、製造業の自動化・効率化には、ソフトウエア(IT技術)もFA機器と合わせて重要です。FA機器とソフトウエアの導入には、以下の3つの立場の技術者が不可欠です。つまり、製造業の自動化・効率化にはこれらの技術者を確保していくことが重要だと考えられます。

①製品を開発するサプライヤーの立場(FA機器メーカ、ソフトウエア開発企業)
②上記製品を生産工程や業務への適用を計画する立場(生産技術者、ITコンサルタント)
③適用を実施する立場(機械受託製造者、SIer)

motor-actuator.com

https://motor-actuator.com/entry/enterprise_management_summary

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*1:ERPを導入する際には、はじめに「SAP」の導入が検討されることが多いです。ERPは、「SAP」か「SAP以外」かと言われるほど、SAPが実質的に標準的な選択肢となっています。

*2:サプライヤーは代表として、産業用ロボットメーカーを記載