【原子力発電】原子炉の分類法まとめ【軽水炉】【高温ガス炉】【高速炉】

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 原子炉の分類の観点と種類についてまとめています。

 原子力発電は、複数の観点から分類が行われます。この分類を分かりやすく紹介します。この分類を知ることによって、日経新聞などで目にする機会の多い「軽水炉」「高温ガス炉」「高速炉」なども見通しよく把握することができます。

 まず簡単に「原子力発電の仕組み」と「具体的な分類例4例」を紹介します。その後、具体的な原子力発電の分類の観点を列挙します。

 全体としては、以下の表の内容をまとめています。

原子力発電の代表的な方式と分類例

原子力発電の仕組み

 原子力発電所から、電気が家庭に届くまでの仕組みを簡単に紹介します。この仕組みをまとめると、以下の6段階から構成されます。

  1. 核反応で熱を生み出す。
  2. 熱で水を沸騰させ蒸気にする(勢いのある気体を生み出す)*1
  3. 蒸気の勢い(気体の勢い)で、タービン(風車のようなもの)を回す
  4. タービンにつながれた発電機が回る
  5. 発電機で電気が作られる
  6. 送電線、配電線を通って、家庭に電気が届く

 「0. 核反応で熱を生み出す。」「1. 熱で水を沸騰させ蒸気にする。」以降の段階は、石炭火力発電や地熱発電とおおよそ共通となります。

 以下の図に、BWRを例に仕組みを簡単に示します。

原子力発電の流れ(BWRを例に)

 原子力発電の仕組みについては、以下のYouTube動画が分かりやすいです。
https://www.youtube.com/watch?v=ptvqaADy0bs

①核反応で熱を生み出す仕組み

 核反応には、核分裂反応と核融合反応の2種類があります。現在、実用化されているのは、核分裂反応です。以下では主に核分裂反応について述べます。

 核分裂反応は、原子核が分裂する反応です。核分裂が起こると、「熱」「中性子」「分裂後の原子核」が生まれます。この時に生まれる「熱」を利用します。

 また、核分裂は原子核に「中性子」がぶつかることによって起こります。核分裂によっても、中性子が生まれます。このため、特定の条件を満たすと「中性子の原子核への衝突」→「核分裂」→「中性子の放出」→「別の原子核への衝突」→「核分裂」・・・と核分裂反応を持続させることができます。このように核分裂反応が持続する、特定の状態を臨界状態と呼びます。

 臨界状態にするためには、放出した中性子の速度を遅くする必要がある場合があります。中性子を遅くするための物質を減速材と呼び、水や炭素が用いられます。減速される前の中性子を高速中性子と呼びます。また、減速された後の中性子を熱中性子と呼びます。

 核分裂については、例えば以下の動画を参照いただければと思います。

②熱で水を沸騰させ蒸気にする仕組み

 核エネルギーを効率よく利用するためには、現在はエネルギーを電気にする必要があります。効率よく発電するために、核反応による熱でまず水を沸騰させて蒸気を発生させます。この蒸気の勢いでタービンを回します。タービンは発電機に繋がっており、発電機によって電気が作られます。

 タービンを回すという点からは、水でなくても勢いのある気体であれば何でもよいということになります。

 原子炉から熱を奪い、水に熱を伝える媒体を冷却材といいます。原子炉の立場で考えると、この媒体によって冷却されるため冷却材と呼びます。冷却材としては、水(軽水)、水(重水)、液体ナトリウム、ヘリウムガスなどあります。しかしながら、実用化されている発電所の多くでは、冷却材としては水が採用されています。

 蒸気タービンのイメージについては、東京電力の以下の動画が参考となります。

原子炉の分類例

 以上をもとに分類例を4点紹介します。

 以下の図に、紹介する4例の構成例の比較を示します。いずれの方式でも、勢いのある気体でタービンを回し発電を行います。

原子力発電の方式と機器構成例

分類例①沸騰水型軽水炉(BWR)

 沸騰水型軽水炉は、「燃料には低濃縮の二酸化ウラン」、「熱中性子にするための減速材には水(軽水)」、「 燃料から熱を輸送する冷却材として、水(軽水)」、「タービンを回す流体として水(軽水)」を用います。

 以上をまとめると、低濃縮二酸化ウラン燃料 軽水冷却 軽水減速(熱中性子)炉となります。通常は、省略して軽水炉と呼ばれます。

 このように、原子炉のタイプの通常の呼称は、要点のみを残した省略が多いです。このため呼称のみから、 各原子炉のタイプの違いをイメージするのは難しいです。

 軽水炉は、広く普及した原子炉であるため、さらに細分化され表記されます。熱交換器がない*2軽水炉を沸騰水型軽水炉(BWR)と呼びます。

 一方、熱交換器(蒸気発生器)がある*3軽水炉を加圧水型軽水炉(PWR)と呼びます。

 BWRでは、原子炉からタービンに至るまで、利用される水は全て同じであることが特徴です。

 BWRの構成のイメージと特徴を以下の図に示します。

BWR(沸騰水型軽水炉)の特徴

分類例②加圧水型軽水炉(PWR)

 加圧水型軽水炉は、「燃料には低濃縮の二酸化ウラン」、「熱中性子にするための減速材には水(軽水)」、「 燃料から熱を輸送する冷却材として水(軽水)」、「タービンを回す流体として水(軽水)」を用います。

 以上の点は、沸騰水型軽水炉(BWR)と同様です。

 PWRでは、「減速材としての水」と「タービンを回す流体としての水」が別のものになるように分離されています。それぞれの水が混ざらずに、熱だけ伝えるように「熱交換器(蒸気発生器)」が用いられます。BWRにはこの熱交換器(蒸気発生器)がありません。

 PWRは、BWRと同じように水(軽水)を多く活用した原子炉です。ただし、熱交換器によって水が2つの系統に分離されています。

 PWRの構成のイメージと特徴を以下の図に示します。

PWR(加圧水型軽水炉)の特徴

分類例③高速炉(ループ型)

 高速炉*4は「燃料にはプルトニウム」、「高速中性子を利用するため、減速材は不要」、「 燃料から熱を輸送する冷却材として液体ナトリウム」、「タービンを回す流体として水(軽水)」を用います。

 以上をまとめると、プルトニウム燃料 液体ナトリウム冷却 高速炉となります。通常は、省略して高速炉と呼ばれます。

 冷却材としては、減速材としての働きがある水を用いることができません。このため、中性子を減速させない液体ナトリウムが減速材として用いられます。

 高速炉(ループ型((もんじゅの場合)))の構成のイメージと特徴を以下の図に示します。

(ループ型)高速炉の特徴

分類例④高温ガス炉(HTGR)

 高温ガス炉は、「燃料には低濃縮の二酸化ウラン」、「熱中性子にするための減速材には黒鉛」、「 燃料から熱を輸送する冷却材としてヘリウムガス」、「タービンを回す流体としてヘリウムガス」を用います。

 以上をまとめると、二酸化ウラン燃料 へリムガス冷却 黒鉛減速(熱中性子)炉となります。通常は、軽水炉と比較して高温のガスを取り出せることから、高温ガス炉と呼ばれます。

 高温ガス炉の構成のイメージと特徴を以下の図に示します。高温ガス炉は、軽水炉と比較して高温が取り出せます。このため発電用途以外にも、水素製造用途などが期待されています。

 高温ガス炉(HTGR)の構成のイメージと特徴を以下の図に示します。

HTGR(高温ガス炉)の特徴

原子炉の分類の観点

 以下に、原子炉の分類の観点をまとめます。この観点にそって、分類されることが多いです。

 分類の観点は無数にあります。しかし、おおよそ以下の事項で日経新聞に記載されるような事項は網羅できていると思います。

■利用する核反応:核分裂、核融合
■核分裂を発生させる中性子の分類:熱中性子、高速中性子
■原子炉を冷却する冷却材:水(軽水)、水(重水)、液体ナトリウム、ヘリウムガス、溶融塩
■高速中性子を熱中性子に変える減速材:水(軽水)、水(重水)、黒鉛
■タービンを回す気体:水、ヘリウムガス
■軽水炉にて熱交換器の有無:加圧水型軽水炉(PWR、熱交換器あり)、沸騰水型軽水炉(BWR、熱交換器なし)
■出力:電気出力30万kW以下の場合は、小型炉(SMR)
■安全設備:自然に原子炉を冷却できる場合は、パッシブセーフティ有り
■冷却材の循環方式:自然循環方式(冷却ポンプなし)、強制循環方式(冷却ポンプあり)

 特に小型炉の特徴に関しては、以下のページにまとめています。こちらを参照いただければと思います。

まとめ

 この記事では、原子炉の分類例や分類の観点をまとめました。

 脱炭素社会という文脈で、日経新聞などで原子力が取り上げられることがあります。このページに記載の情報がそのような記事の理解の助けとなれば幸いです。

原子力発電の代表的な方式と分類例

参考文献

■電力システム工学

 全体として各項目の記載量は少ない。原子力発電に関しても同様で記載は数ページであるが、記載内容が少ない分要点が掴みやすい。

*1:高温ガス炉の場合は、水を介さずにガスの力で直接タービンを回すこともできる。

*2:原子炉の中の水が気液二相である。原子炉の中で沸騰しているので、沸騰水型。

*3:原子炉の中が液相一相である。原子炉内の水を加圧して、沸騰しないようにしているので加圧水型。以下の現象のように、圧力が高いと水の沸点は高くなる。例1.富士山の山頂だと気圧が低く沸点が下がる。例2.圧力鍋では高温の水で調理できる。

*4:もんじゅの場合

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