今回は、「振動工学の基礎 新装版 森北出版」のレビューです。
運動する機械には、振動現象が発生します。振動現象は、材料の破壊や騒音などの問題につながってしまいます。このような振動現象を、人間の理解できる形で体系化したのが振動工学です。振動工学という道具で、振動現象の理解を深めることができます。
この本では、振動工学の基礎をしっかり学ぶことができます。
レビューの項目 | 内容 |
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オススメ度 | ★★★★★ 5/5 |
こんな人にオススメ | ①振動工学を初めて学習する方 ②振動現象の理解が必要な技術者 |
前提知識 | ①古典力学の知識 ②微分積分学の知識 (常微分方程式レベル) |
レビューする本
本の名前 | 著者 | 出版社 |
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振動工学の基礎 | 岩壺卓三 松久寛編著 |
森北出版 |
図書の概要
この本は、振動工学の入門書です。振動工学を学ぼうとする方が、まず知っておいたほうがよい知識は全て詰め込まれています。
この「振動工学の基礎」は、古典力学及び微分積分学の知識があれば読み進めることができます。また、この「振動工学の基礎」の知識が、より具体的な振動現象への対処に進むために不可欠な基礎知識となります。
この本の特徴は、「①振動現象の理論的な部分は広く扱っている点」、「②実測データの解析方法を扱っている点」の2点です。振動現象は難しい現象です。このため、実験方法の概要を理解しておくことは、非常に重要となります。この本は、実験データの扱い方を簡単に記載してある点もポイントが高いです。ただし、実験方法をちゃんと理解するためには、フーリエ変換を学んでいるほうがよいと思います。
また、この本には、特に古典力学や微分方程式に関する説明は有りません。このため、これらの知識がないと消化不良になってしまうと思います。
対象となる読者
対象となる読者は、振動現象の理解に必要な基礎知識を知りたい方です。ただししっかりと内容を消化するためには、「①古典力学」や「②微分積分学(常微分方程式レベル)」の初歩を学んでおく必要があります。
振動工学とは?
運動する物体には、振動現象が必ず生じます。振動現象は、材料の破壊や騒音といった悪影響を生じます。このため、運動する物体の理解を深めるためには、振動現象への理解が欠かせません。
振動現象は、非常に複雑な現象です。このため、振動現象に対して、適切に対処することは非常に難しいです。振動工学は、このような振動現象に対応するための、糸口となります。なぜならば、振動工学とは、振動現象を人間が理解しやすい範囲で体系化したものであるからです。
逆に言うと、人間が過去にであった振動現象の多くは、振動工学の方法で記述されています。このため、振動現象を再現性をもって対処するためには、振動工学の知識が不可欠となります。
図書の目次
第1章 機械の振動
第2章 振動の基礎知識
第3章 1自由度系の振動
第4章 多自由度系の振動
第5章 連続体の振動
第6章 回転機械の振動
第7章 自励振動と安定性
第8章 非線形系の振動とパラメータ励振系の振動
第9章 振動計測とデータ処理
第10章 実験モード解析
第11章 音響・騒音
前提となる知識
この本の前提知識は、主に①古典力学、②微分積分学の2つです。しかし、多自由度系の理解や、実験方法の理解のためには、線形代数学やフーリエ変換の知識が必要となります。
また、古典制御理論の伝達関数に関する知識も、理解を進める上で重要であると思います。
古典力学や微分方程式の基礎知識などを、身に着けたり復習したりしようとする場合は、ヨビノリの動画が非常にオススメです。
YouTubeのヨビノリの動画は、無料ですが非常にクオリティが高いです。
以下の記事にも、無料で使える教材等の記載はありますので、参照いただければと思います。
この本を学んだ後に読める本
この本の知識をつけているとスムーズに読めるようになる本を紹介します。逆にいうと、これらの本を読もうとする際には、「振動工学の基礎」程度の知識を有していることが無難です。例として回転機械*1の振動に関する図書を紹介します。
回転体の力学 森北出版
回転機械に関する入門的な教科書です。POD版しか今は無いようです。
「振動工学の基礎」の知識があると、回転機械にはこういうことがあるのかぁと、新書感覚で読み進められると思います。
回転機械の振動 実用的振動解析の基本 コロナ社
振動現象を扱った非常に良い本です。「振動工学の基礎」の内容は、前提知識の共有のためにはじめの二章でサラッと扱われている程度です。
具体的な問題を意識したまとめ方となっているので、実際に振動現象に対処する方向けと思います。
また、続編もあります*2。
モータの騒音・振動と対策設計法
- 作者:野田 伸一
- 発売日: 2014/03/16
- メディア: 単行本
具体的に振動に対処した事例が紹介されています。振動工学の勉強として読むには、内容がまとまっておらずコスパが悪いかもしれません。
しかし、この本のいいところは、うっすらと振動現象への対処が泥臭いものであることを感じられる点です。勉強のためというよりも、プチ・プロジェクトX的な観点で、新書感覚で読むと面白いと思います。
まとめ
今回は、初めての図書レビューとして「振動工学の基礎 森北出版」を取り上げました。備忘録程度のレビューですが、参考としていただけたら幸いです。
レビューの項目 | 内容 |
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オススメ度 | ★★★★★ 5/5 |
こんな人にオススメ | ①振動工学を初めて学習する方 ②振動現象の理解が必要な技術者 |
前提知識 | ①古典力学の知識 ②微分積分学の知識 (常微分方程式レベル) |