なぜプロサッカー選手でも、シュートを大きく外してしまうのか?

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2018年の6、7月とサッカーのワールドカップがおこなわれました。
非常に素晴らしいゴールが多く生まれ、各国の代表選手のレベルの高さを感じました。

グループリーグのスペイン vs.ポルトガルの試合でも多く名ゴールが生まれました。
たとえば、スペインの3得点目をあげたナチョのゴールや、ポルトガルの3得点目をあげチームを引き分けに持ち込んだC.ロナウドのフリーキックです。

これとは対照的に、ゴールの枠を大きく外したミドルシュートも存在します。このようなミドルシュートを見ると、「なぜ、このような大きく外れるシュートゴールから遠い位置から打ったんだろう」といった疑問が浮かびます。

そこで今回の記事では、「なぜサッカー選手はゴールの枠から大きく外れるシュートを打ってしまうのか」と「なぜミドルシュートの中には、大きく曲がるシュートがあるのか」を紹介していきたいと思います。

シュートを外す理由

サッカーにおいてミドルシュートを大きく外してしまう理由は端的に物理の言葉を使って言うと「ボールに対しての力のかけ方がよくない」ことで「ボールが蹴り出される方向やボールにかけられる回転が良くないから」と言えます。

分かりやすく言うと「必要な回転やスピードがかかるようにボールを蹴ることができていない」からです。この記事ではこのうち「なぜボールの回転がうまくかからない」と、ミドルシュートは大きくゴールの枠から外れるかについて紹介したいと思います*1

また、逆に「なぜミドルシュートの中には大きく曲がるものがあるか」についても同時に説明していこうと思います。

一般的に言われるシュートを外してしまう理由

その前に一応、なぜ「シュートをうまく蹴ることができないか」についての理由として一般的に言われることを紹介したいと思います。

Googleで「サッカー選手 シュート 外しすぎ」と検索した際、以下のような知恵袋がヒットします。

この知恵袋への回答によると

  • ディフェンスやゴールキーパーによるプレッシャー
  • サッカーは足を使うから技術的に難しい
  • プロの使うボールは一般のものと作りが違う
  • コースを狙う
  • ボールの回転をかけるには精度が必要

このような理由のために、「ボールをうまく蹴ることができなくなる」と言われています。しかし、ここでは肝心の「なぜボールを繊細に蹴って回転をかける必要があるか」があまり述べられていません*2。以下で、この点について紹介していきます。

ミドルシュートに必要な要素とは?

ミドルシュートを決めるために必要な要素は何でしょうか?


当たり前ですが、ディフェンダーなどに当たらずに、ゴールキーパーのとることができない位置にボールを蹴ることです。このためには、「ボールを飛ばす方向と速さ」と「ボールの回転」が重要です。

直感的に「ボールを飛ばす方向と速さ」が重要なことはわかりますが、なぜ「ボールの回転」が重要なのでしょうか?

それは、「ボールの回転」によってボールの軌道が変化するからです。冒頭で紹介したスペイン対ポルトガルの試合でも、ボールに回転をかけボールの軌道を変化させることでシュートを決める様子を見ることができます*3

つまり、ボールに回転をかけることは、シュートを決める上で非常に重要です。しかし、この回転をかけるということが難しいようです。

そのため大きくシュートを外す原因は、ゴールから遠いので強いシュートを打とうとするが回転をかけるのに失敗してしまった結果といえると思います*4。非常に月並みな結論ではあります。

ボールの回転とボールの軌道の変化の関係

それでは、ボールの回転とボールの軌道の変化について簡単な図を用いて説明してみたいと思います。

この図は、ボールを右足の内側で蹴るときの様子を真上から見た際の、「ボールの回転方向」と「この回転によってボールにかかる力の向き」を示しています。

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右足の内側でボールを蹴る際の、ボールの運動する方向を上から見たときの様子

右足の内側でボールを蹴る(インサイドキックする)ときのことを考えます。

ボールをインサイドでうまく蹴るとボールに回転をかけることができます。この回転は多くの場合、一番左の図で示すように、真上から見ると反時計周りとなります。この際のポイントは、「右足」でうまく「インサイド」キックをすると「反時計」周りの回転をボールにかけることができるという点です。

実はこの回転が、ボールの軌道に重要な影響を与えます。

普通の感覚だとイメージができませんが、ボールを回転させて運動させると、流体力学的な作用によってボールに対して力が生じます*5。この「回転によってボールに対して生じる力の向き」は「ボールの回転方向」によって決まります。つまり、「ボールの回転方向」を決めると「ボールを曲げる方向」を決めることができます。真ん中の図の黄緑色の矢印は、この関係を表しています。

そして、この「ボールが回転する力」によって徐々に「ボールの軌道が変化」します。これを表すのが一番右の図です。

このように、「右足」で「インサイド」キックを行うと「上からみて反時計周り、蹴る人から見て左向きに」にボールの軌道が変化します。このようなことは、左足、アウトサイドキックに変えても起こります。そこでこれらについても関係をまとめると以下の表のようになります。

表. ボールを「曲がたい向き」を実現するために必要な「蹴る足」、「インサイドorアウトサイド」の関係

蹴る足インサイド or アウトサイドボールが回転する向き
(上から見て)
ボールが曲がる向き
(蹴る人から見て)
右足インサイドキック反時計周り左向き
右足アウトサイドキック時計周り右向き
右足アウトサイドキック時計周り右向き
右足インサイドキック反時計周り左向き

この表を見るとわかるように、右足でのアウトサイドキックと左足でのインサイドキックはボールが同様な変化を見せます。


この記事の一番はじめであげたスペインの3点目をあげたナチョのゴールは、「右足」で「アウトサイドキック」しているのでボールが「右向き」に変化していることが分かります*6。 おそらくボールに回転をかけていないと、ボールの軌道は変化せずボールはゴールの枠内に入っていません。

本田のベルギー戦におけるコーナーキック

日本対ベルギー戦は、ベルギーがカウンターで3点目をとり勝利しました。このカウンターでは本田のコーナーキックを、ベルギーのゴールキーパーであるクルトワが直接キャッチしたことから始まります。

試合後クルトワは「本田は左足で蹴るので、ゴールから少し離れてコーナーキックのボールを直接とることを狙っていた」と語っていました。これは、本田の利き足は左でありコーナーキックのボールを「左足」で「インサイドキック」する確率が高いので、「ボールが右に曲がる」ので直接ボールがゴールになることはなく、キーパーがゴールから離れても大丈夫ということを経験的に語っているのです。

この動画のはじめを見るとコーナーキックを蹴る*7本田のボールが右側に(時計周り)に変化することが分かりやすいです。

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どのボールでも、回転すると曲がる

ボールが回転すると曲がるのはサッカーボールだけの現象ではありません。これは、普遍的な物理現象なのです。


例えば、下の画像ではバスケットボールを回転させて、落とした際のボールの変化です。回転によってボールの軌道が大きく変化していることが分かります*8

ボールの進行方向*9」と「ボールの回転方向」によって「ボールの回転によって働く力の方向(つまり、ボールの軌道の変化)」は決まってしまいます。

それは下の図のようになります。この図を参考に、色々なミドルシュートの回転方向ボールの軌道の変化を見てみるとある法則があることがわかると思います。

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「ボールの進む向き」と「ボールの回転方向」が決める「ボールの回転によって働く力の向き」

おわりに

今回の説明で、ボールが回転するとボールの軌道が変化し、それがサッカーのミドルシュートにおいては非常に重要であることを紹介しました。

また、このようにボールを回転させることとボールの強さをうまく両立させることが難しく、シュートを大きく外してしまうのだと思います。特に多くの人にとってはボールを強く蹴ることの重要性は直感的にわかっても、ボールに回転をかけることの重要性が直感的にはわかりづらいと思います。

ボールに回転をかけるとボールの軌道が変化することを、動画を交えて紹介させていただきました。このことで、ボールに回転をかけることの重要性について少し直感的にわかったのではないかと思います。

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野球における変化球

ボールが回転するボールの軌道が変化することはサッカーに限りません。野球の変化球は、この物理的な原理に基づいています。

野球の変化球とマグヌス効果の関係については以下の記事で紹介しています。


例えば以下の動画は、阪神タイガースの藤波投手の死球を集めたものです。このような投球をすっぽ抜けといいます。野球の投球におけるすっぽ抜けとサッカーのミドルシュートが大きく外れる現象が起こる原因はほとんど同様なものです。つまり、ボールの勢いボールの回転*10をともに高めようとしたがそうはできなかった結果です。

野球の変化球の原理について、以下の記事で紹介しています。

マグヌス効果をより知るためには流体力学を知必要があります。しかし流体力学を学んでも、なかなかマグヌス効果を数式的に理解できるところまではいけません*11。もし、ある程度の数学の知識がある方でしたら以下のような本が流体力学の入門書としてちょうど良いと思います*12

流れのすじがよくわかる 流体力学

流れのすじがよくわかる 流体力学

 

*1:このボールのイメージをもってもらうことで、大きく枠を外したミドルシュートに対して新たな考えを持っていただけたらと思います。ミドルシュートの具体的な蹴り方やコツなどに関しては技術的に話すことができません。ただアウトサイドキックとインサイドキックの際に回転の方向が変わるから、ボールの軌道が回転によって変化する方向などはイメージがしすくなると思います。

*2:つまり、ミドルシュートなどを蹴る際に、ボールにかける回転やボールのスピードなどのシュートに要求される条件について説明されていません

*3:ナチョのゴールとC.ロナルドの3点目。

*4:ボールを強く蹴ると、ボールの回転量が大きくないと変化量が小さくなってしまいます。また他にも、そもそもシュートの方向が悪いという原因が考えられます

*5:野球の変化球を投げたことのあるかたや、サッカーでボールを変化させたことがある方は経験的に理解できると思います。このように回転によって移動する球が変化する効果をマグヌス効果といいます。

*6:ボールをしたから蹴るとドライブ回転がかかり、回転によって発生する力は下向きとなります。つまり、ボールは下向きに変化します。

*7:左足でインサイドキックする

*8:何を直感的に理解したいときは、英訳してyoutubeで検索するとよい英語の動画が見つかります。今回は「マグヌス効果」を英訳して「Magnus effect」で検索しました。

*9:厳密にはボールの周囲の流体に対する相対的な速度の方向

*10:野球ではストレートを含めほぼすべての投球でボールに回転をかけてなげます。

*11:私も円筒に対するマグヌス効果の数式しか知りません。

*12:この教科書の内容で勉強しましたが、内容がまとまっていてわかりやすいと感じました。

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