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【統計】野球のOPSとは何?【具体例でわかりやすく紹介!】

 このページでは、野球のOPS(オーピーエス)の本質を分かりやすく紹介します。

 また、OPS以外の重要な野球の指標についても、本質を紹介します。ここで紹介した内容が、より野球を楽しむきかっけになればと思います。

 まずOPSは、「出塁率と長打率を足した指標」です。

 値の目安としては「OPSが0.700あれば一流選手」、「OPSが1.000あれば超一流選手」です。

 そして結論として、野球のOPSの概要は以下の3点に集約されます。

  1. 打率などと同じく、打撃を評価する指標である。

  2. 従来からの打率や打点よりも得点との相関が高く、より良い打撃指標である。

  3. 長打の評価を折り込みすぎであるが、逆に打撃におけるスター性を織り込んでいるといえる。OPSによる評価はファンの考えるスター選手像と一致しているといえる。

  下のYouTube動画は、バリー・ボンズのホームラン集です。バリー・ボンズは、2004年にメジャーリーグのシーズン記録であるOPS1.422を記録しています*1

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 また、打率や、wOBA、WARなどの様々な他の打撃指標と比較した特徴は、以下の3点にまとめられます。

  1. 従来からの打率や打点と比較した利点:得点の相関が高く、より良い打撃指標である。

  2. wOBAやWARなどの新しい指標と比較した利点:遥かに手軽に計算しやすい

  3. 評価のクセ:やや長打を過大評価しすぎでおり、出塁率が高い選手が過小評価される。逆に、ファンは直感的に長打を打てる選手を評価しやすいが、そのような打撃におけるスター像とOPSの評価は一致しやすい

 特にOPSが広く扱われる背景には、OPSで評価される選手と、ファンの思うスター選手がほとんど一致するためと考えられます。

 アメリカでは、いい投手かを判断する際に防御率が用いられるように、いい打者かを判断する際にOPSが用いられます。

 このように野球には多くの指標があります。映画マネーボールでは、予算の少ないチームが、指標を用いて正しく選手を評価することで、劇的な快進撃を達成した様子がまとめられています。

 以下では、OPSやその他の野球の指標についてさらに詳しく紹介します。

OPSの意味

 OPSは、On-base percentage Plus Slugging percentage(出塁率プラス長打率)の略称です。つまりOPSは、「出塁率と長打率を足した指標」です。

 出塁率とは、各打席でどのくらい出塁できるかの確率を表しています。出塁率は多くの方になじみがあると思います。

 多くの方に、出塁率が4割あればすごい選手であるという感覚があると思います。

 長打率は、各打数でどのくらいの塁打を得るかの期待値を表しています。長打率は、少しわかりづらいです。打率3割である100打数30安打の場合で、少し例を挙げて計算してみます。

・100打数30安打でヒットがすべて単打の場合、長打率は0.300となります。

・100打数30安打でヒットがすべて二塁打の場合、長打率は0.600となります。

・100打数30安打でヒットがすべてホームランの場合、長打率は1.200となります。

 打率3割は一流選手です。打率3割で、ヒットが全てシングルヒットの場合は長打率は0.300となります。

 打率3割でヒットが全て二塁打というのは、かなりすごい選手だなという感覚と思います。この場合の長打率は0.600となります。

 また、打率3割でヒットが全てホームランというのは、通常ありえないことです。この場合の長打率は1.200となります。

どのくらいだとOPSはすごい?

 初めてOPSを見てみても、どの位がすごいかは分かりづらいです。

 一度計算してみた長打率の場合で、OPSを計算してみます。出塁率は0.400とします。

・100打数30安打でヒットがすべて単打の場合、長打率は0.300、OPSは0.700となります。

・100打数30安打でヒットがすべて二塁打の場合、長打率は0.600、OPSは1.000となります。

・100打数30安打でヒットがすべてホームランの場合、長打率は1.200、OPSは1.600となります。

 以上の値をみると、「OPSが0.700あれば一流選手である」、「OPSが1.000あれば超一流選手である」、「OPSが1.600あれば有りえないほど良い選手である」という感覚がイメージできると思います。

なぜ打率ではダメなのか?

 野球で三冠王といえば、首位打者・ホームラン王・打点王です。

 このように、打撃を評価する数字として打率やホームラン数、打点が用いられてきました。

 打率やホームランでも野手の打撃力をある程度は評価できます。

 しかしながら、2000年ごろから、より良い評価指標がないかが探られるようになりました。

ファンの感じる打率への違和感

 アメリカでベーブ・ルースが活躍した時代や、日本で王選手や長嶋選手が活躍した時代では、スター選手は打率も高く本塁打も打てました。

 つまり黎明期には野球ファンの考えるスター選手は、高い打率を保持していました。このため、打率が重視されていました。

 しかしながら野球の人気が高まり、優秀な選手が増えたことで、本塁打を打てる選手が打率が高いとも限らなくなってきました。

 つまり、時代が経つにつれて高い打率であれば、スター選手というわけではないことにファンが気づいてきました

 野球ファンは、潜在的に打率より正確にスター性を評価できる指標を求めていました。

高い打率に高い給料が必要なのか?

 また打率より活躍を測定するのに適した指標があれば、選手をより正しく評価でき、球団にとってもメリットがあります。

 選手をより正しく評価できれば、良い選手と安く契約できる可能性があるためです。

 まさに企業におけるKPI設計(Key Performance indicator、重要業績評価指標)の問題が、2000年ごろからメジャーリーグでも取り上げられたことになります。

 例えば映画マネーボールでは、資金力の弱いアスレチックスが、あまり注目されていなかった指標に着目することで、チームとして高い成績を残す様子がまとめられています。

よい指標とは何か?

 より良い指標とは、より得点に結びつく指標のことです。なぜならば、野球は多くの得点を取ったチームが勝利するスポーツだからです。

 そこで考案された指標の1つがOPSです。そしてOPSによる評価は、ファンのスター性の評価とも一致したことから、最も普及した打撃指標の1つとなっています。

 まとめると、打率やホームランでも野手の打撃力を評価できますが、OPSの方が「正確」な上に「ファンの直感とも合っていて」便利な指標であるため使われる機会が多くなっています*2

実際の成績をOPSから見る

OPSから見るイチローvsニール

 プロ野球の1996年におけるオリックスのイチロー選手とニール選手の成績を示しています*3

表. イチロー選手とニール選手の成績比較(1996年シーズン)

選手 OPS 打率 ホームラン 打点 盗塁 WAR 備考
イチロー .926 .356 16 84 35 8.3 首位打者
ニール .943 .274 32 111 1 4.8 本塁打王、打点王

 オリックスは1996年に、プロ野球で日本一となりました。イチロー選手とニール選手共に打撃の中軸として、チームの日本一に貢献しました。

 両選手とも、打撃タイトルを獲得するなど、かなり優秀な打撃成績を残しています。

 それでは、イチロー選手とニール選手のどちらが打撃面でより活躍したといえるでしょうか?

 結論としては、イチロー選手とニール選手の打撃面での活躍は、同程度であったといえます*4

 イチロー選手とニール選手は、かなり違うタイプの選手です。しかしながら、両選手のOPSに注目してみると、ほとんど同じ値であることが分かります。

 両選手のOPSがほとんど同じであることから、両選手の打撃面での活躍度合いは同程度あったことが分かります。

 このように、タイプの異なる選手でも、OPSという指標によって打撃成績を簡単に評価することができます

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OPSから見る小久保vs村松

 次に、1995年におけるダイエーの小久保選手と村松選手の成績を示しています。

表. 小久保選手と村松選手の成績比較(1995年シーズン)

選手 OPS 打率 ホームラン 打点 盗塁 安打数 備考
小久保 .914 .286 28 76 14 133 本塁打王
村松 .726 .308 0 13 32 101 規定未達

 1995年シーズンに、小久保選手はHR王を獲得し、村松選手は規定打席に未達ながら打率3割を達成しています。

 このように、両選手とも一流選手です。それでは、どちらの選手の打撃成績が、よりすぐれていると言えるでしょうか。

結論としては、小久保選手の方が打撃面での活躍は大きかったといえます。

 実際に1995年の成績を見ると小久保選手の方が高いOPSを記録していることが分かります。

 このことは、小久保選手の方が、スター性があり、ファンから高い評価を受けているという感覚とも一致します。

 このように、OPSはファンの選手への評価と一致しやすいという面があります。

 なお、1995年のパリーグの小久保選手のOPSは、パリーグ全体で2位でした*5

 つまり、小久保選手の1995年の打撃での貢献度は、パリーグでイチロー選手に次ぐ2位だったということになります。

表. パリーグのOPSランキング(1995年シーズン)

選手 OPS 打率 ホームラン 打点 盗塁 安打数
イチロー .976 .342 25 80 49 179
小久保 .914 .286 28 76 14 133
初芝 .903 .301 25 80 1 138

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歴代のシーズンOPSランキング

 どのような選手が優れたOPSを残しているのでしょうか?

 プロ野球で2019~2021シーズンにおいて、最もOPSの高かった選手をまとめました。

 この表からもOPSが高い選手は、スター選手であることがわかります。

表. 2019年~2021年シーズンでOPSの最も高かった選手

シーズン リーグ 選手名 OPS 打率 ホームラン 出塁率 長打率
2021 鈴木誠也 1.072 .317 38 .433 .639
2021 吉田正尚 .992 .339 21 .429 .563
2020 村上宗隆 1.012 .307 28 .427 .585
2020 柳田悠岐 1.071 .342 29 .449 .623
2019 鈴木誠也 1.018 .335 28 .453 .565
2019 森友哉 .959 .329 23 .413 .547

 

 次に、プロ野球におけるシーズンOPS記録を見てみます*6。王選手が大変素晴らしい選手であったことが、OPSからもわかります。

表. 通算OPSランキング

選手名 OPS
王貞治 1.080
松井秀喜 .996
アレックス・カブレラ .990
落合博満 .987
タフィ・ローズ .940

打者のOPS、投手の防御率

 投手の指標として、打者を評価するOPSと対になるものとして、防御率があります。

 防御率は従来からある指標です。しかしながら、投手の得点を防ぐ能力を大きく反映するため、現代でも重視される指標です。

 大雑把には「打者を評価するときにはOPS」、「投手を評価するときには防御率」を用います。

究極の指標WAR(ウォー)

 選手を評価するための、もっとも良い指標はOPSや防御率なのでしょうか?

 実は、OPSや防御率を上回る究極の指標があります。それがWAR(ウォー、wins above replacements)です。

 WARは選手の貢献を勝利数として表します。またWARは、野手と投手に共通の指標です。

 例えば、大谷選手の2021年シーズンのWARは8.0であり*7、メジャーリーグ で1位でした。つまり2021年の大谷選手の活躍は、8勝分の勝利をチームに上乗せしたということになります。

 大谷選手はこのような活躍のために、2021年にMLBアメリカンリーグMVPを受賞しています。

 野球は勝利を目的とするというスポーツであるため、WARは究極の指標とされています。 なぜならば、WARは正に勝利への貢献度合そのものを評価しているからです。

 他にもファンが選手のスター性を評価する指標としては、「打者であればホームラン数」、「投手であれば奪三振数、投球回数」があります。

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WARから見るイチロー選手と松井選手

 メジャーリーグにおけるイチロー選手と松井選手の2004年の成績を以下に示します。

 両選手とも2004年が、メジャーリーグで最も活躍したシーズンとなっています。

表. イチロー選手と松井選手の成績比較(2004年シーズン)

選手 WAR OPS 打率 ホームラン 打点 盗塁 安打数
イチロー 7.1 .869 .372 8 60 36 262
松井 3.0 .912 .298 31 108 3 174

 OPSでは松井選手がイチロー選手を上回っています。このことは、松井選手の方が打撃力がよりすぐれていたことを示唆しています。

 一方、WARではイチロー選手のほうが高かったことが分かります。

 つまり、打撃や走塁、守備を総合的に考えると、イチロー選手の勝利への貢献度の方がが高いということになります。

 なお、2004年シーズンのイチロー選手のWARはメジャーリーグで1位です。つまり、2004年にメジャーリーグで最も活躍した選手は、イチロー選手ということになります。

 イチロー選手は、2004年にメジャーリーグのシーズン最多安打を更新しています。

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WARから見るイチローのア・リーグMVP受賞

 メジャーリーグにおけるMVPは、記者投票によって決定します。

 MVPの記者投票では、「選手の個人成績」と「チーム成績」の2点が考慮されやすいと言われます。ただし、2010年代後半以降は、特に「選手の個人成績」を重視するように変わってきています。

 実際に、この2点が考慮されていることが分かりやすい例として、イチロー選手のMVP投票結果があります。

 イチロー選手の、2001年シーズンと2004年シーズンの個人成績と所属チームであるシアトルマリナーズの成績を以下の表に示します。

表. イチロー選手と松井選手の成績比較(2004年シーズン)

シーズン MVP WAR WARリーグ順位 OPS 打率 チーム順位 チーム勝率
2001 MVP受賞 6.0 6位 .838 .350 地区1位 71.6%
2004 未受賞 7.1 1位 .869 .372 地区4位 38.9%

 簡単に考える場合は、個人成績として勝利への貢献度を表すWARを用いられることが多いです。

 なぜならば、WARが1位の選手はシーズンで最も活躍した選手と言えるからです。

 イチロー選手は、2001年のWARは6.0*8でありリーグ6位でした。つまり、イチロー選手は、アメリカンリーグで6番目に活躍した選手でした。

 しかしながら所属チームが勝率7割を超え地区優勝を果たしたこともあり、イチロー選手は2001年のアメリカンリーグMVPを受賞しています。

 一方、2004年シーズンのイチロー選手は、WARは7.1*9でありリーグ1位でした。つまり、2004年のアメリカンリーグで、最も勝利に貢献した選手はイチローでした。

 しかしながら、所属チームは勝率3割台の地区最下位でした。このこともあり、イチロー選手は2004年のMVP投票で7位に終わりました。

 このようにMVPの記者投票では、「選手の個人成績」と「チーム成績」の2点が考慮されやすいと言われます。ただし、2010年代後半以降は、特に「チーム成績」に関係なく「選手の個人成績」を重視するように変わってきています。

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WARがあれば、バリー・ボンズは筋肉増強剤に手を染めずに済んだのか?

 WARが今のように注目されていたら、バリー・ボンズは筋肉増強剤に手を染めなかったかもしれないと言われています。

 バリー・ボンズは筋肉増強剤に手を染める前から、最も優れた野球選手でした。しかしながら、十分に評価されなかったために、ホームランを追い求めて筋肉増強剤に手を染めたと言われているからです。

 個人に対する正当な評価の重要性を感じさせます。
   WARは、個人成績を評価する究極の指標です。

 WARでは、打撃に加えて守備や走塁も評価されます。このため、例えばイチロー選手が、総合的には松井選手よりも勝利への貢献度が高いことを評価できます。

 1990年代に最も高いWARを記録した選手はバリー・ボンズでした。つまり、1990年代に、最も優れた選手はバリー・ボンズでした。

 しかしながら、WARが注目されだしたのは2010年代以降です。

 それ以前は、打率や本塁打、打点といった、伝統的な打撃指標が重視されていました。

 特に1990年代後半から2000年代前半のメジャーリーグは、本塁打重視の風潮がありました。

 その中でも1998年は、マーク・マグワイアとサミー・ソーサによる壮絶は本塁打王争いが繰り広げられ、アメリカの野球ファンの注目を大きく集めました。

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  一方、球界一の選手であるにもかかわらず、バリー・ボンズの注目度は低いものでした。

表. バリー・ボンズ、マーク・マグワイア、サミー・ソーサの成績比較(1998年シーズン)

選手 WAR OPS 打率 ホームラン 打点 盗塁
バリー・ボンズ 8.5 1.047 .303 37 122 28
マーク・マグワイア 8.5 1.222 .299 70 147 1
サミー・ソーサ 7.1 1.024 .308 66 158 18

 そこでバリー・ボンズは、ホームランを追い求めるようになります。そして1998年のオフシーズンから、筋肉増強剤の使用を開始したと言われています*10

 バリー・ボンズは、2001年にメジャーリーグのシーズン本塁打数記録である73本を打ち立てました。しかしながら筋肉増強剤の使用のために、メジャーリーグ殿堂入りの栄誉を永遠に失ってしまいました。

 1990年代の当時から、WARという指標が普及していたなら、バリー・ボンズは筋肉増強剤に手を出していなかったのではないかと思わされます。

表. バリー・ボンズの筋肉増強剤使用前後の成績比較(1998vs.2001)

シーズン WAR OPS 打率 ホームラン 打点 盗塁
1998年 8.5 1.047 .303 37 122 28
2001年 12.5 1.378 .328 73 137 13

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代表的な評価指標

 ここまでOPSについて紹介しました。ここでは、代表的な指標を紹介します。

 下の図によく使われる指標をまとめました。

野球で代表的な評価指標

 WARやOPS、防御率の他にも、継続して出場したこと自体を評価するため、打席数や投球イニングは重要な評価項目なります。

 また、守備指標としてはUZR(アルティメットゾーンレーティング)が有名です。

 UZRは、守備によってどの程度の得点を防いだかを表す指標です。

そもそも指標とは何か?

 ここまで、打率やホームラン、防御率などの指標が野球で用いられることを当たり前のように扱ってきました。

 このページの最後となりますが、そもそも野球における指標とは何かについて紹介します。

 結論としては、複雑な野球というスポーツの中で、誰でも簡単にスポーツを理解するために野球の指標は用いられます。

野球を構成する要素

 野球は、数字ではありません。人と物理現象、そして人の決めたルールから構成されます。 どのスポーツにも言えますが、非常に複雑です。

 また、スポーツの歴史を考えても、大雑把には優れた運動能力を持つ選手が活躍できることが人気なスポーツのルールに最低限必要なこととなります。

プロスポーツと優秀な選手

 しかし、人が一つのスポーツに熱狂すると、多くの人が集まり、最終的にプロスポーツになります。

 プロスポーツでは、多くの人から見たら些細に思える差が重要になります。言い換えると、誰がより優秀な選手なのか分からなくなります。なぜなら、全てのプロスポーツ選手の運動能力は、人間全体から考えると非常に優秀だからです。

 ここに、野球を始めスポーツで各種の指標が用いられる理由があります。

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野球の指標と人間の判断力

 野球の指標は、誰が良い選手か分かりやすく判断するための材料です。打率やホームラン、防御率などの指標を用いることで、誰でも簡単に選手を評価できるようになります。

 大谷翔平がメジャーリーグ に行く前から、メジャーリーグ でも二刀流でMVPをとるほどに活躍すると確信できた人は少ないです。

 なぜならば、多くの人は指標を利用しないと野球選手の巧拙を判定できないからです。大谷が日本にいたときには、大谷がメジャーリーグ でプレイした指標はありませんでした。

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 なお、プロ野球での指標からメジャーリーグで通用するかをより正確に判定する指標を抽出することはできます。例えば、メジャーリーグ で打者は「速球に強い」ことが必要です。

 このため、打者がメジャーリーグ で活躍するかどうかは、150km/h以上に対するOPSを見ることでより正確に予想することができます。

 今後は、トラックマンなどによる物理的な測定が進むことが考えられます。ゆくゆくは、非常に複雑な場面における選手の能力を、誰もが評価できる時代が来るかもしれません。

まとめ

 このページでは、OPSについて紹介しました。

 結論として、野球のOPSの概要は以下の3点に集約されます。

  1. 打率などと同じく、打撃を評価する指標である。

  2. 従来からの打率や打点よりも得点との相関が高く、より良い打撃指標である。

  3. 長打の評価を折り込みすぎだが、逆に打撃におけるスター性を織り込んでいるといえる。OPSによる評価はファンの考えるスター選手像と一致しているといえる。

 また、打率や、wOBA、WARなどの様々な他の打撃指標と比較した特徴は、以下の3点にまとめられます。

  1. 従来からの打率や打点と比較した利点:得点の相関が高く、より良い打撃指標である。

  2. wOBAやWARなどの新しい指標と比較した利点:遥かに手軽に計算しやすい

  3. 評価のクセ:やや長打を過大評価しすぎでおり、出塁率が高い選手が過小評価される。逆に、ファンは直感的に長打を打てる選手を評価しやすいが、そのような打撃におけるスター像とOPSの評価は一致しやすい

 特にOPSが広く扱われる背景には、OPSで評価される選手と、ファンの思うスター選手がほとんど一致するためと考えられます。

 アメリカでは、いい投手が判断する際に防御率が用いられるように、いい打者かを判断する際にOPSが用いられます。

 またOPS以外にも、新しい指標がいくつかあります。OPSを含めて、以下の3つの指標は広く使用されるようになっているので、知っているとより野球を楽しめる機会があると思います。
・OPS
・WAR
・UZR

参考ウェブサイト・本

 以下に、野球の統計を見る上で参考となるウェブサイトや本などをまとめます。

◾️セイバーメトリクス入門: 脱常識で野球を科学する
 野球を統計の観点から考えるセイバーメトリクスの入門書です。分かりやすいです。

◾️マネーボール
 メジャーリーグのアスレチックスのお話です。 資金の乏しいアスレチックスは、当時着目されていなかった指標に着目することで、低い年俸で良い選手を獲得し、チームとして良い成績を上げることができました。

 映画と小説があります。

以下は英語の書籍やサイトです。
◾️カーブボール
 野球の統計についてまとめられた本です。OPSの意義などについて紹介されています。

■Bill James Handbook(ビルジェームズハンドブック)
 ビルジェームズは、野球において指標を活用し始めた先駆者です。

 このハンドブックには、各選手の活躍度合いを表した指標が多くまとめらています。

■ウェブサイト:FanGraphs
 メジャーリーグの指標がまとめられたサイトです。

 このサイトで、計算されるWAR(fWAR)は野球という競技において最も重要な指標です。

www.fangraphs.com

■Baseball reffernce
 このサイトでもFanGraphsと同様に、指標を確認することができます。

www.baseball-reference.com

■Reddit America's Pastime
 英語掲示板Redditの野球板です。

 米国現地のファンが注目しているできごとを確認することができます。

www.reddit.com

motor-actuator.com

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*1:なお、日本のプロ野球のシーズン記録は、王貞治選手が1974年に記録した1.293です。

*2:シーズンを通してチームの一試合当たりの得点を予測することを考えます。誤差は、打率であれば0.25点以内、出塁率や長打率であれば0.20点以内、OPSであれば0.15点以内となります。つまり、OPSが打率や出塁率、長打率よりも優れた指標ということになります。出典:カーブボール

*3:WARは以下のサイトから引用しています。
http://npbstats.com/%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%BA/war%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC/

*4:WARを見ると、打撃と守備と走塁の全てを考慮した総合的な活躍度では、イチロー選手の方が優れていました。WARについては後ほど紹介します。

*5:以下のサイトより。https://2689web.com/1995.html

*6:通算4000打席以上

*7:fWAR

*8:fWAR

*9:fWAR

*10:https://www.sfgate.com/sports/kroichick/article/WHY-BONDS-USED-STEROIDS-Excerpt-from-Chronicle-2502614.php