2023年度の中小企業診断士試験に独学で合格した受験記録を記載します。本ページのみで完結するコンパクトな構成としているので、これから中小企業診断士試験を受ける方に気軽に参考としていただければと思います。
各人の経歴によって有している前提知識などは異なると思います。このためこのページでは万人に役立つ勉強法はないと思います。
しかしながら、市販される中小企業診断士のテキスト限られていることから、このページで紹介する私が独学で採用した勉強法やテキスト、スケジュールは多くの人に役に立つものと考えます。
また、このページには二次試験の事例Ⅰの再現答案と実際の問題用紙も示しています。二次試験の対策前に、解き方のイメージを掴む際にもお役に立つかと思います。
中小企業診断士試験を受けた理由
簡単ではありますが、私が中小企業診断士試験を受けた理由を2点以下にまとめます。
1点目:何となくカッコよさそうだから。
2点目:経営に関する知識を一通り抑えることができるから。
1点目は、何となくカッコよさそうだからです。カッコよさそうと思うことがモチベーションとなりました。
2点目は、経営に関する知識を一通り抑えられるからです。もともと、会社経営に関する知識を得たいという気持ちがありました。しかしながら、よりよい経営のために必要な知識は無数にあります。一方、人生は有限であるため、無数の事柄を学ぶことはできません。そこで、学習の際にはその無数にある知識の中で学習範囲を有限に定める必要があります。この有限に定める際の参照先として、一定程度の権威を有する意味で中小企業診断士試験を利用しました。
試験のための勉強時間
私の場合、中小企業診断士試験のための勉強時間は400時間ほどでした。
一次試験対策で150時間、二次試験対策で250時間の合計400時間ほどかかりました。
ただし私の場合は前提知識として、一次試験の理解系科目の知識を有していました。この前提知識の獲得にかかる時間を150時間以上と考えると、合計で550時間以上かかったことになります。
学習方法の概要
一次試験と二次試験の学習方法の概要を以下に示します。
■一次試験:TACスピードテキスト7冊を読み込み(150時間)
■二次試験(事例Ⅰ〜Ⅲ):「まとめシート流」後に過去問演習(150時間)
■二次試験(事例Ⅳ):「30日完成」後に過去問演習(100時間)
この学習方法の詳細をこのページの以下に記載します。
スケジュールと使用テキスト
具体的なスケジュールと使用テキストを以下の表に示します。
一次試験はTAC出版のスピードテキストシリーズ(スピテキ)のみで対策しました。
また二次試験は「まとめシート流!(ノウハウ本)」、「30日完成!」と「ふぞろいシリーズ(過去問集)」を中心に対策しました。
使用したテキストの詳細は各項目で紹介しています。
表. スケジュールと使用テキスト
一次試験
一次試験の学習方法
一次試験の学習はTAC出版のスピードテキスト(通称スピテキ)の読み込みを行いました。この読み込みに費やした期間は、休日14日間ほどです。
一次試験の勉強開始時に有していた前提知識は会計や経済学、ファイナンス、応用情報技術者試験の入門レベルの知識です。この知識については、「一次試験の前提知識」の項で少し紹介します。
一次試験の学習では、まず全科目のTACスピードテキストの読み込みを1周しました。次に試験直前に暗記系科目を1周し知識を定着しました。
一次試験の過去問演習は実施していません。直前期もTACスピードテキストを使って、暗記科目の詰め込みを行なっていました。
なお暗記系科目と理解系科目は私が勝手に名付けたもので、以下のように各科目を分類したものとなります。
■暗記系科目:「企業経営理論」「運営管理」「経営法務」「中小企業経営・中小企業政策」
■理解系科目:「財務・会計」「経済学・経済政策」「経済情報システム」
一次試験の学習時間
一次試験のための勉強時間は150時間ほどでした。
一次試験では過去問演習をおこなっていないため、TACのスピードテキストシリーズ合計7冊を読むのに150時間かけました。
一次試験の結果
自己採点の結果、一次試験の結果は以下の表のとおりでした。合計点469点/700点であり基準の420点を超えて合格でした。
表. 一次試験の結果
科目 | 合計点 |
---|---|
合計点 | 469点/700点 |
経済学・経済政策 | 64点/100点 |
財務・会計 | 76点/100点 |
企業経営理論 | 57点/100点 |
運営管理 | 64点/100点 |
経営情報システム | 80点/100点 |
経営法務 | 68点/100点 |
中小企業経営・中小企業政策 | 60点/100点 |
一次試験の前提知識
一次試験の学習を進めると、私が過去に学習した内容と被っているものがあることに気づきました。特に理解系の科目(経済、財務会計、経営情報)では、事前の知識により大幅に学習時間を短縮することができました。
本来、一次試験の学習にはこれらの本の学習内容も含まれるため、追加で150時間以上の学習時間は必要と思います*1。つまり、一次試験のための勉強時間は300時間以上*2必要と考えます。
以下の表に過去に読んだテキストを示します。特に時間をかけても良いので、体系的に学習したいと思う方には読んでみるのも良いかもしれません。しかしながら、基本的にTACのスピードテキストが試験範囲の内容は網羅しているので不要と思います。
表. 前提知識となったテキスト
関連科目 | 図書名 | 読んだ周回数 | 著者 | 出版社 |
---|---|---|---|---|
経営情報システム | キタミ式応用情報技術者 | 2 | きたみりゅうじ | 技術評論 |
財務・会計 | 道具としてのファイナンス | 1 | 石野雄一 | 日本実業出版 |
財務・会計 | 会計学入門 | 3 | 千代田邦夫 | 中央経済 |
経済学・経済政策 | マクロ経済学・入門 | 2 | 福田慎一 | 有斐閣 |
経済学・経済政策 | ベーシック経済学 | 2 | 古沢、塩路 | 有斐閣 |
二次試験
二次試験の学習方法
中小企業診断士の二次試験は記述試験です。私の場合、二次試験対策は一次試験の合格後から開始しました。二次試験では事例Ⅰから事例Ⅳまで4つの事例が出題されますが事例ごとに出題内容が異なります。
この中でも「①事例Ⅰ、事例Ⅱ、事例Ⅲの学習方法」と「②事例4の学習方法」は大きく異なります。このため事例を2種類に分けて記載しています。
二次試験のための学習時間は合計250時間ほどでした。
「①事例Ⅰ、事例Ⅱ、事例Ⅲの学習」では、ハまずウツー本「「まとめシート」流!ゼロから始める2次対策」を読み学習法を確認しました*3。その後に二次用のテキストを一周し、過去問演習に取り組みました。
「②事例Ⅳの学習方法」では、計算問題が出題されることから、まず事例Ⅳの問題集(「30日完成」)を2周してから過去問演習に取り組みました。
過去問演習では全ての事例について10年分の過去問*4を1周ずつしました。
二次試験の学習に使用した主なテキストと過去問集をまとめた表をそれぞれ以下に示します。
表. 二次試験対策で過去問演習前に学習した主なテキスト
関連事例 | 図書名 | 読んだ周回数 |
---|---|---|
事例Ⅰ~Ⅲ | 「まとめシート」流!ゼロから始める2次対策 | 3 |
事例Ⅳ | 30日完成!事例Ⅳ合格点突破計算問題集 | 2 |
表. 二次試験対策で市販される過去問集
図書名 | 演習回数 | 収録過去問 | 解答方針解説 |
---|---|---|---|
ふぞろいな合格答案17 | - | 2023年度 | 有 |
ふぞろいな答案分析7 | 1 | 2021年度、2022年度 | 有 |
ふぞろいな答案分析6 | 1 | 2019年度、2020年度 | 有 |
ふぞろいな答案分析5 | 1 | 2017年度、2018年度 | 有 |
ふぞろいな合格答案10年データブック | 1*5 | 2008年度~2017年度 | 無 |
二次試験の勉強時間
二次試験のための勉強時間は250時間ほどでした。
一次試験の合格後から二次試験対策を開始しました。過去問演習を含めて「①事例Ⅰ、事例Ⅱ、事例Ⅲの学習」には150時間ほどかけました。また「①事例Ⅳの学習」には100時間ほどかけました。
以下の表に二次試験の学習時間の内訳をまとめています。
表. 二次試験の学習時間
二次試験全体(①+②) | ①事例Ⅰ、事例Ⅱ、事例Ⅲ | ②事例Ⅳ | |
---|---|---|---|
総学習時間 | 250時間 | 150時間 | 100時間 |
過去問演習時間 | 120時間 | 100時間 | 20時間 |
過去問演習前の学習時間 | 130時間 | 50時間 | 80時間 |
二次対策の学習期間配分
私の場合の二次対策の学習期間の配分を紹介します。一次試験合格後から考えると、8, 9, 10月の3カ月の対策期間があります。
まず8月のはじめに、一年分*6の過去問を試しに解き二次試験の問題の雰囲気を掴みました。次に8月のはじめから9月の上旬までに、テキストを利用して過去問演習前の準備を終わらせました。9月の中旬から直前期まで過去問演習は実施しました。
二次試験の過去問演習は2時間単位のまとまった時間が必要な点を、多忙な中で学習を進める方は計画の際に留意しておいた方が良いです。
以下の表に二次試験後の学習期間配分を示します。
表. 二次試験の学習時間
実施期間 | 実施事項 |
---|---|
8月はじめ | 1年分の過去問を試し解き |
8月〜9月上旬 | 過去問演習前の学習120時間 |
9月中旬〜試験直前 | 過去問演習 |
二次試験対策の要点①事例Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ
事例Ⅰ~Ⅲは、問題の解き方を身に着けることが重要と思います。
人によって問題の解き方は違うと思いますが、私は「まとめシート」流!ゼロから始める2次対策に記載された解き方を身に着けました。解法を身につけるために、暇があればこの本を読み、結果的には3周しました。
私が二次試験の際に、「まとめシート」流の方法で書き込んだ問題用紙をこのページの下部の「実際の問題用紙」に示しております。この問題用紙から二次試験での解答作成過程のイメージが少し掴めるかと思います。個人的には「まとめシート」流の解法を過去問演習前に身につけたのは結果的に正解だったと感じています。
過去問演習のためには「ふぞろいな合格答案」や「ふぞろいな答案分析」などの「ふぞろい」シリーズを活用する以外に選択肢はないです。過去問演習のためにはお金を惜しまずに購入することが重要だと思います。
二次試験対策の要点②事例Ⅳ
事例Ⅳは計算問題が多いので演習量に点数が比例します。このため「30日完成!合格点突破計算問題集」など問題集をまずは2, 3周し*7解法を一定程度定着させてから、過去問に取り組みました。この取り組み方は結果的に正解だったと感じています。
二次試験の結果
二次試験の結果は以下の表のとおりでした。合計点248点/400点であり基準の240点を超えて合格でした。
表. 一次試験の結果
事例 | 合計点 |
---|---|
合計点 | 248点/400点 |
事例Ⅰ | 74点/100点 |
事例Ⅱ | 52点/100点 |
事例Ⅲ | 60点/100点 |
事例Ⅳ | 62点/100点 |
実際の問題用紙と再現答案
二次試験では解答作成方法が重要です。
基本的に「まとめシート」流や、「ふぞろい」シリーズを参照すれば解答作成方法は身につくと思います。
そこで最後に事例Ⅰ①再現答案、②実際の問題用紙を添付します。下記に添付する事例Ⅰで開示された得点は74点です。参考になれば幸いです。
①事例Ⅰの再現答案(開示得点)
②事例Ⅰの実際の問題用紙
2023年度2次試験 事例Ⅰの実際の問題用紙を以下に示します。「まとめシート」流にそった、答案作成のイメージを持っていただければと思います。
二次試験口頭試験対策
二次試験は口頭試験もあります。合格率は高いようですが、実施したことを紹介します。
まずYouTubeで口頭試験について紹介してくださっている方の以下の動画を試聴しました。また試験前日には事例を読みなおし、各事例ごとにSWOTや3Cをまとめました。
独学にオススメのテキスト
ここまで私の実施した学習方法を紹介してきました。最後に学習に使用したテキストの中で、オススメできるテキストを記載しておきます。どのようなテキストを購入した方が良いか悩む方の参考になればと思います。
▪️TACスピードテキストシリーズ
オススメ度:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
学習のタイミング:一次試験前
一次試験対策のテキストです。科目に合わせて7冊あります。全7冊とも内容がよくまとまっており、一次試験合格に必要十分な内容でした。一次試験対策は、このテキストの読み込みのみでも可能と思います。
▪️30日完成!
オススメ度:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
学習のタイミング:二次試験事例Ⅳの過去問演習前
二次試験の事例Ⅳの問題集です。事例Ⅳの全ての分野を網羅しています。
事例Ⅳは計算問題のため、絶対的な正解がわかりやすいです。逆に不正解は完全に不正解であるので、一定の対策が不可欠です。二次試験の過去問演習前に対策を実施しないと計算問題を理解するための時間がなくなります。
▪️「まとめシート」流!
オススメ度:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
学習のタイミング:二次試験事例Ⅰ〜Ⅲの過去問演習前
二次試験の事例Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの解き方を紹介している本です。
二次試験の事例Ⅰ独学が難しいです。この本の紹介する方法はかなり有用です。独学の場合は、この本を指針として、各個人で二次試験の解法を固めていけば合格に近づくものと思います。
この本の二次試験の解き方では、無印の色ペンを使うのが特徴です。このページの上部の「実際の問題と再現答案」の項目でも確認いただけると思います。
▪️「ふぞろい」シリーズ
オススメ度:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
学習のタイミング:二次試験の過去問演習
「ふぞろい」シリーズは、中小企業診断士の過去問演習用のテキストです。
二次試験の記述の問題は採点基準が公開されていません。そのような状況で、この本には想定される採点基準が記載されています。独学でも記述対策を進められる点に特徴があります*8。
また、採点基準以外にも解答の作成方針の解説があるものもあります。過去問演習のはじめのうちは、解答の作成方針の解説がある問題を解く方が、学べる点が多いと思います。
私は過去問演習を10年分実施しましたが、個人的な感覚としては、解法を固めるために過去問演習は5年分以上は実施することが望ましいと思います。しかしながら、「ふぞろい」シリーズは、どの本にどの過去問が記載されているか分かりづらいです。そこで、「ふぞろい」シリーズを以下の表にまとめて示します*9。
表. 二次試験対策で市販される過去問集
図書名 | 演習回数 | 収録過去問 | 解答方針解説 |
---|---|---|---|
ふぞろいな合格答案17 | - | 2023年度 | 有 |
ふぞろいな答案分析7 | 1 | 2021年度、2022年度 | 有 |
ふぞろいな答案分析6 | 1 | 2019年度、2020年度 | 有 |
ふぞろいな答案分析5 | 1 | 2017年度、2018年度 | 有 |
ふぞろいな合格答案10年データブック | 1*10 | 2008年度~2017年度 | 無 |
まとめ
このページでは中小企業診断士の合格体験記録を記載しました。
私の採用した学習方法の概要は以下のとおりです。
一次試験:TACスピードテキスト7冊を読み込み(150時間)
二次試験(事例Ⅰ〜Ⅲ):「まとめシート流」後に過去問演習(150時間)
二次試験(事例Ⅳ):「30日完成」後に過去問演習(100時間)
上記の方法で結果的に、一次試験と二次試験共に合格できました。
各人の経歴によって有している前提知識などは異なると思います。しかしながら、このページで紹介した私が独学で使用したテキストや実施したことに関する情報が何らかの形でお役に立てば幸いです。
*1:テキスト一冊一周に15時間かかると仮定した場合
*2:[一次試験の学習時間目安300時間以上]=[実際の学習時間150時間]+[事前知識の学習時間150時間以上]
*3:過去問演習の間にも、時間があれば内容を周回し最終的には3周しました。
*4:私の場合は、2007年度、2014年度〜2022年度分の10年間分
*5:私が解いたのは2008年度、2015~2017年度分のみ
*6:私の場合は、2009年度分
*7:全ての問題を2周し、苦手な問題は3周しました。
*8:二次試験直前期の「ふぞろい」の採点基準だと私の点数は50〜75点のことが大半でした。実際の二次試験の結果も52〜74点もその範囲内なので、学習の目安になると思います。
*9:2023年度受験時点
*10:私が解いたのは2008年度、2015~2017年度分のみ